熊の喰い残しを狼が食べ尽くした

彼らはそこで、熊が次々に人間を襲って喰らう様子を48時間にわたって目撃した。そして熊が立ち去るのを待ちかねたように、今度は周囲を徘徊していた狼の群れが、熊の喰い残しを食べ尽くしていった。

48時間が経過するまでに、2人の若者が凍死し、直後に3人目も死亡した。

4人目の若者、ヨハン・アンデルセンというイヌイットは、仲間よりもいくぶんかましな防寒具を身につけていたので、今では恐ろしい墓場と化した、かつての自宅にたどり着くことができた。

彼は保管されていた他のいくつかの衣類と、打ち捨ててあった食べ物の破片を見つけた。

これらを武器に、23マイルないし24マイル離れた近隣の入植地ホワイトベアーを目指し、ほぼ奇跡的に到達することができた。

彼はそこで、彼が見てきた恐るべき物語を語り、貧しいながらも必要な救助を受けることができた。(後略、The Sun. July 31, 1886)

熊の喰い残しを狼が食べ尽くした(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/duncan1890
熊の喰い残しを狼が食べ尽くした(※写真はイメージです)

3500人が犠牲になり、「食人」も行われた…

「3500人が飢えと野獣に殺された」というショッキングな記事は、アメリカ全土に衝撃を与えたらしく、地方各紙に転載された。

さらに各紙は続報を伝えている。以下の記事もまた、多数の新聞に転載されたものだ。

「ラブラドールの恐怖 セント・ジョーンズ、ニューファンドランド 7月30日」

ラブラドールのオコックからナンシー・バレット号で到着したイヌイット、ヘルジェナティス・テルは、居住地の人口130人ほどが、彼と妻が立ち去ったとき、すでに死に絶えていたと語った。

3月上旬に、油数滴とアザラシの皮の破片が配られ、まれにクマが捕獲されたが、最終的に物資はほとんど使い切ってしまった。

6月3日、彼らは6日間何も食べず、飢えに駆られて、それまで仕えていた白人と、凍死した数人のインディアンの死体を喰った。仲間の一人が死ぬと、死体は凍結されて、後に喰われた。