海外大学進学が増えてきた3つの要因

現役の海外大生が中心となり、高校生への海外大学進学に関する情報提供や進学支援などを行っている特定非営利活動法人留学フェローシップ(以下留フェロ)で理事長を務め、史上最年少で芦屋市長に当選した髙島たかしま崚輔りょうすけさんは、海外大学進学が増えている背景として、次の3つの要因を挙げています。

1つ目は、海外大学に進学している人と触れ合う機会が増えたことです。留フェロをはじめ海外大学進学を応援する団体が、自治体や学校に招かれることが増え、現役の海外大生が長期休暇を利用して全国を巡っています。「自分と年齢が近い海外大生の講師に接すると、『自分も行けるかも』という自信につながるようだ」と髙島氏は語ります。

2つ目は、給付型の奨学金が増えたことです。柳井正財団やJASSOなどに加え、2022年からは笹川平和財団も加わるなど、返済不要の給付型奨学金が増えたことで、経済的なハードルが下がりつつあります。

3つ目は、海外大学出願のノウハウが普及してきたことです。欧米の大学入試では、学校の成績、推薦状や課外活動のほか、その学生の個人的な経験や価値観、意欲などを見るエッセイなど、さまざまな材料から多面的に評価されます。

海外大学を目指したきっかけは「教育への違和感」

英語の勉強法に加えて、推薦状や課外活動はどうすべきかなどは国によって異なるため、海外大志望者は情報収集の難しさに直面するのですが、留フェロのような団体のイベントや現役海外大生によるSNSでの情報発信などによって、情報の壁が徐々になくなってきているのです。

こうした背景から、最近では都市部の私立難関校に限らず、地方公立校や非進学校でも海外大学が進路の選択肢として加わるようになり、志願者の裾野が広がってきています。

今回取材した4年間の正規留学者に関しては、英語が好きで海外の大学を目指したというよりも、海外の大学を目指すことで英語の勉強に本腰を入れたという人ばかりでした。中には、「実は高校まで英語は苦手だった」という人も少なくありませんでした。そうした人たちが海外の大学を目指したきっかけは、日本の教育に対する違和感もありました。

「高校では先生が教えてくれたことをそのまま理解するというところに違和感があった。先生に質問に行くと『それは大学でやることだから今は考えなくていい』と言われ、そういうスタイルの教育に疑問を感じた」(ノックスカレッジ→イェール大学院の砂山さん)
イェール大学の看板
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