※本稿は、加藤紀子『海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。
ここ数年間で「留学者数」が急速に増えている
文部科学省の調査によると、日本からの留学者数は、コロナ禍に見舞われた2020年は激減しましたが、2017年から19年にかけては10万人を超え、10年間で約3倍に増えています。ただし、2週間以上1カ月未満、1カ月以上3カ月未満の留学が多く、英語力向上の効果は期待しづらい短期間がメインとなっています。
けれども中には、秋田県の公立大学である国際教養大学、早稲田大学国際教養学部、立教大学グローバル・リベラルアーツ・プログラム、同志社大学グローバル・コミュニケーション学部、関西大学外国語学部、近畿大学国際学部のように、1年間の留学を必修としているところもありますし、必修ではなくても、独自の交換留学制度を使って1年間留学できる大学は国公立、私立問わず数多く存在しています。
留学が外国語運用能力に対してどういったインパクトを与えるかという研究は世界中で数多く行われています。アメリカの大学を対象に行われた大規模な調査で留学期間を1年間と1学期間とで比較したところ、留学期間が長いほど語学能力のテストのスコアが上昇することがわかっています。
また、JASSO(日本学生支援機構)による日本での調査は、自己評価によるものの、語学力は3カ月未満の留学経験者より3カ月以上の留学経験者の方が高い評価となっています。海外の大学への4年間の正規留学者については、明確な数字での裏付けは得られないのですが、これまで取材してきた限り、「増えている」という見方が優勢だと感じています。
アメリカやイギリスの大学を志望する場合、全額自己負担では学費が高額になるため、経済的な理由で実現に至らないケースも実際には多いでしょう。しかし少なくとも、海外の大学という進路がひとつの選択肢になりつつある傾向は、ここ数年間で急速に高まってきているようです。