「私からの仕送りは止めた方が良いのでしょうか?」
母親は心配顔です。女性のひきこもりは決して珍しくはありませんが、離婚後に、ある程度の年齢になってからひきこもるようになったというケースは初めてでしたので、私もうまくアドバイスできません。お子さんがいなかったことが良かったのか、悪かったのか。
「いい人でもいればいいんですけど」
母親はまだ長女の再婚を望んでいるようです。
「失礼ながら、家に閉じこもっていたのでは出会いもないでしょう。結婚よりも、生活を成り立たせることが先決ですね」
「私からの仕送りは止めた方が良いのでしょうか?」
確かに、自立した生活を送るべき年齢の大人に、いつまでも親が資金援助を続けるのは良いことではありません。しかし、お金がなくなったら働くというものでもありません。むしろなおさら閉じこもってしまうこともあります。
逆に立ち直るためには、生活の安定が必要だとの考えもあります。もちろん、そうはいってもお金が尽きてしまえば、親子で共倒れとなりかねません。私は話を伺いながら、将来の資金状況をシミュレーションしてみました。
相談者は、数年前に亡くなった夫が残した財産があり、遺族年金を受給(自分の年金と合わせ収入は計月15万円)しています。持ち家があるため、当面は、賃貸暮らしの長女に10万円もの仕送りをしても、自分の生活はなんとか成立させられます。
しかし、徐々に貯蓄(2700万円)を取り崩していくことになり、このままの状況が続いていくと、母親亡き後、長女が70歳前後に貯蓄が尽きてしまうことがわかりました(図表1赤線参照)。
「このまま、あの子は仕事も結婚もできない、ということなのでしょうか?」
私のシミュレーションをじっと見つめて、母親は落胆しました。
「もちろん、お嬢さんが立ち直って、少しでも収入が得られるようになるとか、再婚の可能性もあります。しかし、ここで楽観的な希望でシミュレーションをしていたのでは、将来への準備ができません。まずは、今のままの状態が続いた場合を考えましょう」