沙知代夫人には「お前は黙ってろ!」

中学生を前に、野村は「私のせいだ」と頭を下げた。このとき、傍らで見ていた沙知代夫人が「そうよ、アンタのせいよ」と大きな声を出した。

その瞬間、いつにない強い口調で野村は言った。

「お前は黙ってろ!」

指を突き出すビジネスマン
写真=iStock.com/kuppa_rock
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普段見せないすごい剣幕に、沙知代夫人も口をつぐんだという。

長谷川晶一『名将前夜』(角川書店)
長谷川晶一『名将前夜』(KADOKAWA)

一連の野村夫婦のやり取り、いや、オーナーと監督のやり取りについて、この現場にいた多くの少年たちがハッキリと記憶していた。それだけインパクトの強い場面だった。

ある意味では息子・克則の「最後の夏」に向けて、野村夫妻の尽力で誕生した港東ムースの「最初の夏」は悔しい結果に終わった。

克則は堀越高校に進学し、幼い頃からの憧れである甲子園を目指すことを決めた。

一方の野村克也は、強い思いで臥薪嘗胆がしんしょうたんを誓っていた。「勝負師」である野村が、このまま手をこまねいているはずはなかった。チーム強化のために、ここからさらに本腰を入れて少年野球指導に乗り出すことになる――。

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