全国の女子大65校中5~15校は惠泉と似た状況にある

2023年4月現在、私立女子大は全国に65校あります(一部共学化している長野・清泉女学院大学を含む)。

この65校すべての一般入試の志願倍率および入学定員充足率の推移について、データを集計しました。

入学定員充足率は入学定員に対して実際の入学者がどれだけいたかを示す指標で、1人でも少なければ「定員割れ」となります。もちろん、定員割れ=危険、というわけではありません。多少の入学辞退者などが出るのはあり得ます。

そこで、恵泉女学園大学の2022年と同じ水準、すなわち、志願倍率が1.5倍以下、充足率が60%未満の大学を抽出しました。

結果、2022年時点で恵泉女学園と同じ水準にある女子大は川村学園女子大学、岐阜女子大学、京都ノートルダム女子大学、大阪女学院大学、神戸海星女子学院大学の5校が該当します。

募集停止になってもおかしくない「危険水域」にある大学一覧

編集部註:記事初出時、数値の一部に間違いがありました。尚絅大学の2022年度入学定員充足率を50.2%としていましたが、2023年新設学部分を含めたことで誤った母数に基づく計算になっており、正しくは74.5%でした。また、恵泉女学園大学の2020年度偏差値を「35.0~40.0」としていましたが、正しくは「35.0~42.5」でした。訂正します。記事中の図版を修正し、合わせてタイトルを「6校」から「5校」に変更しています。関係者のみなさまにお詫び申し上げます。(4月19日14時30分追記)

付言しますと、充足率が60%台の女子大は8校ありました。

合わせて13校は危険水準にあります。このうち3校は、恵泉女学園大学と同じく、小規模(学部数は2学部以下)、都市部に立地という共通点があります。

充足率が70%台であっても安泰とは言えない女子大も数校あります。今後、5~15校が恵泉女学園大学同様に募集停止に追い込まれる可能性があります。

学生集めが順調な大規模校はキャリア志向に対応

一方、大規模校を中心に、順調に学生を集めている女子大は23校あります。

専門性が極めて高いのは、女子栄養大学、女子美術大学、東京女子医科大学の3校です。

残る20校のうち、12校は2000年代以降に学部を増やした大規模校です。具体的には、昭和女子大学、東京家政大学、同志社女子大学、武庫川女子大学など。

女子大は1990年代以前だと、文学部や家政学部が中心でした。卒業後は一般職就職が中心です。共学校は理系学部だけでなく、文系学部でも女子学生が少なかった時代です。それよりも、女子学生だけで学ぶ女子大には需要があったのです。

ところが、2000年代以降、女性のキャリアが変わっていきます。一般職採用は減っていき、総合職採用が中心となりました。女子学生側も、一般職よりも総合職に就職、結婚・出産後もキャリアの継続希望者が増えていきます。

そうなると、文学部や家政学部よりも、経済・経営・法学部や国際系・IT系学部などを志望するようになります。

このキャリア志向の変化に対応して学部を新設していった女子大は学生集めが順調です。

主な女子大の学部新設
・共立女子大学:国際学部(2007年)、ビジネス学部(2020年)、建築・デザイン学部(2023年)
・昭和女子大学:グローバルビジネス学部(2013年)、国際学部(2017年)、環境デザイン学部(2020年)
・津田塾大学:総合政策学部(2017年)
・日本女子大学:国際文化学部(2023年)
・椙山女学園大学:現代マネジメント学部(2003年)
・京都女子大学:法学部(2011年)、データサイエンス学部(2023年)
・武庫川女子大学:建築学部、経営学部(共に2020年)、社会情報学部(2023年)