難易度の低い大学に内部進学するのは「格好悪い」
ところが、高校・大学とも小規模だとどうでしょうか。
高校の規模が小さければ、大規模校以上に大学進学実績に神経質になります。少しでも悪くなれば、志願者の減少もあり得るからです。
さらに、大学も小規模だと学部数が少なく、その分だけ選択肢が限られます。その上、一般にも知名度が高くないことから、難易度が高くありません。
そうなると、高校内でも同級生の国公立・難関私立大志望に引っ張られる形で内部進学を忌避するようになります。
もう一点、小規模校だと、高校と大学が同じ敷地内にある学校法人が多数あります。便利とも言えますが、これが系列校スルー現象を強める一因にもなります。高校生からすれば、大学進学で同級生だけでなく後輩にもいいところを見せたがります。それが小規模校で難易度も高くないと、「格好悪い」と考えてしまい、忌避するようになるのです。
実は女子大・共学校合わせて10校程度でも、この系列校スルー現象が出ています。
恵泉女学園の募集停止発表に添えられた一文の意味
東京女学館大学と恵泉女学園大学、この2校は系列校の置かれた状況に関しても奇妙なまでに一致します。
四谷大塚全国中学入試偏差値一覧によると、東京女学館中学、恵泉女学園中学とも偏差値は54。
2023年大学入試での合格者は東京女学館高校が東京大学1人、東北大学1人、東京外国語大学3人、早稲田大学20人、慶應義塾大学34人など。
恵泉女学園高校は、大阪大学2人、九州大学1人、千葉大学1人、早稲田大学20人、慶應義塾6人など。付言すると、2022年には東大合格者を1人出しています。
学校規模も、両校とも1学年200人程度と似ています。
一方、東京女学館大学は国際教養学部のみの1学部、恵泉女学園大学は人文学部、人間社会学部の2学部。人間社会学部を構成する2学科のうち1つは国際社会学科で、東京女学館大学国際教養学部と同じ国際系です。
人文学部も国際系学部・学科も、近隣には共学校含めライバルが多数存在します。しかも首都圏は公共交通網が発達しており、多少離れている大規模校にも簡単に通学できてしまいます。
恵泉女学園大学が募集停止の発表時に「恵泉女学園中学・高等学校は、この件で不利益を被ることはございません」との一文を入れているのは、系列校スルー現象をよく示しています。