系列高校から内部進学者が出ない「系列校スルー現象」

2000年以降で募集停止・廃校となった大学は恵泉女学園大学を含めて16校あります。

なお、募集停止となった後も学生は在籍するため、基本的には卒業するまで大学は存続します(解散命令や大学譲渡により、即廃校となった大学は3校)。

この16校についても分析していったところ、立地も大きく影響していることが判明しました。具体的には、3校が地方に立地し、学生集めがそもそも難しかった「地方型」。10校は都市部に立地、競合相手の多さから学生獲得に失敗した「都市型」です(残る3校は運営の不祥事が主因となった不祥事型)。

恵泉女学園大学は都市型に該当します。2012年に募集停止となった東京女学館大学も都市型であり、この2校は立地だけでなく「系列校スルー現象」も似ています。なお、東京女学館大学の最終募集年度となった2011年度の定員充足率は61.1%、倍率は1.0倍でした。

系列校スルー現象とは、同じ学校法人が経営する系列の高校が内部進学者を出さない(スルー)状況を指しています。

日本の私立大学は学校法人が経営しており、その多くが系列の高校を擁しています。同じ系列なので、内部進学者が一定数出ることで大学は学生を確保できますし、高校生やその保護者からすれば、大学受験で苦労しなくても内部進学できます。

ところが、2000年代以降、都市部で中学受験が盛んになると、この内部進学モデルが崩れる私立高校が出てきました。

大規模校であれば一定数の内部進学者を維持できる

高校からすれば、他校との競争に勝つため、進学実績を上げる必要があります。しかも、女性のキャリアの変化により、高校生・保護者とも高学歴志向となりました。その結果、国公立大や医学部を含む理系学部志望者が増加します。

首都圏の私立中高一貫校だと、豊島岡女子学園、鷗友学園女子、浦和明の星女子などは進学実績が伸びており、難易度が上がっています。

大学を擁する私立高校も、自校の生徒獲得のためには、内部進学より国公立・難関私大合格の実績を上げる必要に迫られます。

それでも、高校・大学ともに大規模であれば、内部進学がゼロになることはありません。高校内部でも、国公立・難関私立大志望から、内部進学希望まで多様です。特に、大学が日東駒専クラスより上であれば、「無理に受験しなくても」との心理が働きます。これは、中学受験を検討する保護者も同じ。

実際に、立教女学院(立教大学)、大妻(大妻女子大学)、共立(共立女子大学)などは、今も内部進学者が一定数います。そのため、系列校スルー現象は強くは出ていません。