「嫌」は最強のモチベーションにもなる!?
さて、「フキハラ」の原因にもなりうる決して喜ばしくはない「ネガティブな感情」を、何かポジティブなことに利用することはできないのでしょうか。
そのヒントになりそうなのが、データ22です。この実験の目的は、脳波から「嫌」と「集中力」との関係を調べることでした。被験者には、「ミスをするほど、報酬を下げる」という逆インセンティブを与え、第1章のデータ5を測定した際と同様の作業(一般的なオフィス環境におけるパソコンでの数値入力)を行ってもらいました。
しかも近くでわざと雑談したりして作業の邪魔をしています。作業は全部で15分で、作業開始の5分後から10分後までの5分間の感情を示す脳波を測定しました。
「実験に協力しているのにミスで報酬を減らされる」ことへの怒りと邪魔をされることへの怒りのどちらが大きかったのかはわかりませんが、こちらの思惑どおり、「嫌度」を示す脳波がかなり強く出ています。
そして驚くべきは、「集中度」を示す脳波のほうもかなり強く出ていることです。
「ミスが少ないほど、報酬が上がる」というポジティブなインセンティブを与えて測定したデータ5と比較してすれば、その違いは明らかでしょう。
なぜこんなことが起こるのか、そのメカニズムは定かではありませんが、「嫌」が「集中力」を維持させるという現象は実際に起きているのです。もちろん、「嫌」があまりにも大きすぎれば、「集中力」はかえって下がる可能性のほうが高いことと思います。
でも、例えば、ライバルがいるとかミスを横から指摘されるといった「ちょっとイラッとする状況」には、集中力を高める効果はありそうです。だとすれば、「不機嫌ノーラ」を有効に活用する方法として、「集中力への転用」というのはありなのかもしれません。これについてはさらに研究を進めていきたいと思います。