江戸時代の藩校も同じように指導者を育てていた
狙いは、相手の意志を明確にし、その意志を成長させる質問を心がけることです。この際、質問したリーダーは自分の意見を言わないで、相手が発言するのを我慢強く待つことがとても重要です。
このようにフォロワーが自分の意志を発露できるように質問を投げかけ、フォロワーが自分の意志をつくり上げるのに十分な時間を与えることで、フォロワーの責任感とそれに付随する自主積極的を引き出します。これによって、「第三の波」の組織にふさわしいミッションコマンド型のフォロワーを育てることができます。
リーダーの育成にも大変有効だと思います。
実はこの質問術は、私が過去に陸上自衛隊幹部学校の校長を務めていた時に実践していたものです。学生に問いかける際は答えを求めるのではなく、彼らの意志を尋ね、その意志を伸ばし、意志を堅固に保持するように誘導することが重要であると気づき、その後もさまざまな場面で実践し続けてきました。
ちなみに、民間の教育機関の先生方にこの質問術の話をしたところ、賛同していただける方がたくさんいてうれしい気持ちになりました。後でわかったことですが、明治維新前の江戸時代の各藩校では、この質問術と似たような一対一の問答を通じて、藩の指導者層の武士を育てていたそうです。
日本型組織ならではの「飲みケーション」
フォロワーとのコミュニケーションに関して、もうひとつ注意したいのが、飲み会など業務時間外のコミュニケーションです。
近年は若者が飲み会に参加したがらない傾向があるようで、さらにはコロナの影響もあって一時期に比べると職場の飲み会が減ったと言われています。一方でいわゆる「飲みニケーション」が再評価されているとも言われ、それを推奨する企業があるという話も聞きます。
従来の日本型組織の飲み会では、上司による部下への強権的なコミュニケーションがしばしば行われてきました。「今日は無礼講だ」と言いながらまったく無礼講ではなく、「とにかく俺の話を聞け!」や「お前にそんなことを言われる筋合いはない」などといった上司の言葉が飛び交う“文化”は、おそらく今日においても少なからず日本の組織に残っていると思われます。