組織力を向上させる上司と部下の関係とは、どんなものか。元自衛隊陸将の小川清史さんは「上司は部下に対して、『答え』を求める質問ではなく『意志』を求める質問を心がけるべきだ。こうすることで、一人ひとりが自主積極的に動くミッションコマンド型の組織にすることができる」という――。

※本稿は、小川清史『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

部下に指示するアジア人実業家
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一人ひとりが自主積極的に動ける組織の基本

組織(チーム)を「第三の波」(※)の世界でも生き残れるミッションコマンド型にするには、リーダーもフォロワー(部下)もお互いの仕事内容を把握しておくことが重要になります。

※アメリカの未来学者アルビン・トフラーが1980年の著書『第三の波(The Third Wave)』で提唱した概念。現代文明が農業革命(第一の波)、産業革命(第二の波)という二つの大変革を経て、情報革命という「第三の波」のうねりのなかにあるとした。

私がかつてアメリカの陸軍歩兵学校に留学して作戦術を学んだ時には、教官が「下については2つ下の部隊の能力、上については2つ上の組織の任務まで把握するべきである」と強調していました。それができて初めて、一人ひとりが自主積極的に動くミッションコマンドが成立し、作戦術が有効に機能するということでした。

実際、私もその後さまざまな経験を通じて、上下各2ランクまでの任務・能力を把握することがミッションコマンドの基本であり、作戦術に不可欠だと実感しています。

上司が部下の仕事を知っておくべき理由

みなさんが置かれている状況によっては、この「2つ上・2つ下の任務・能力」に該当するものがないかもしれませんが、少なくともフォロワーはリーダーの、リーダーはフォロワーの仕事に興味を持ち、お互いにしっかりとその内容まで把握しておくべきでしょう。

フォロワーがリーダーの仕事内容を把握しておくことは、チームの戦略やリーダーの意図を理解して自主積極的に動くためには欠かせません。また、リーダーがフォロワーの仕事内容を把握していないと、そもそも「作戦術」思考によるチームビルディング自体が成り立たなくなります。それこそが、基本中の基本となります。

リーダーがフォロワーの仕事を知らないということは、フォロワーの仕事に関心がないということなので、担当者もやる気をなくし、えてして見えない部分は手を抜きがちになります。そうなると当然、チーム全体の業績も上がらなくなります。逆に言うと、リーダーが自分のチーム内のすべての仕事に関心を持ち、業務内容を把握しておくことはチーム力アップの必要条件だということです。