会社を潰してしまう経営者には、どんな問題があるのか。経営コンサルティングを行う武蔵野の小山昇社長は「いわゆる『2代目社長』は創業者に比べるとストレス耐性が低い傾向にあるので、『恥をかきたくない』『頭を下げたくない』という気持ちが先立ち、社長室にこもりがちになる。それでは組織を強くすることはできない」という――。

※本稿は、小山昇『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

頭を抱えているビジネスマン
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです

社長の仕事は、社員の生活を守ること

会社を強くしたければ、社長が誰よりも働く必要があります。

武蔵野は、社員の能力を測定するために、「エナジャイザー」(公益財団法人日本生産性本部が提供する人と組織の適性診断)というツールを導入しています。エナジャイザーを使うと、その人の仕事の速さ、正確さ、安定性といった情報処理能力をA~Eで評価できます。

私の評価は「C」。武蔵野の社員の中でも、能力は低いほうです。それなのに、武蔵野の誰よりも結果を出すことができるのは、「1分1秒も無駄にせず、社員の誰よりも、汗をかいて働いているから」です。

わが社の経営計画書には「経営計画発表にあたって」と題した一文が掲載されています。この文の最後に、

「無理を承知で、みなさんに協力をお願いいたします」

と書いています。ただしこれは、社員に仕事を無理強いするためではありません。

社長の仕事は、社員の生活を守ることです。社長には、社員全員を雇用し続ける義務があります。そのために社長は、時代がどのように変化しようとも売上を上げ、利益を出さなければなりません。

社長が遅くまで残業すると組織力が弱くなる

「無理を承知で」とは、「社員の誰よりも、社長自身が、無理を承知で頑張る」という覚悟をあらわしています。「無理を承知で」を言い換えると、

「社長が強い気持ちを持って誰よりも働かなければ会社は変わらない。利益を上げることは簡単なことではない。そのことを私自身がよく理解した上で」

といった文脈になります。

誰よりも汗をかき、働く。それが社長の仕事です。

ただし、「誰よりも汗をかいて働くこと」と、「誰よりも遅くまで会社に残ること」は、イコールではありません。それどころか、「社長が誰よりも遅くまで残っている会社」は、組織力が弱くなります。

先日、赤字続きの2代目社長(A社長)が「毎日、最後まで会社に残っている」というので理由を聞いたところ、「自分がいないと、安心できない」と答えました。

これを聞いて、赤字の理由がわかりました。A社長は、

「社員を信用していなかった」
「社員に任せておけなかった」
「自分が最後まで会社にいないと安心できなかった」

だから、「会社に残っていた」わけです。