※本稿は、小山昇『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
中小企業には、優秀すぎる人材は必要ない
組織を強く、大きくしたいなら、社員教育をして個の能力を伸ばすと同時に、「従業員数の増員」「人材の補充」が不可欠です。
従業員数を増員する際、赤字の社長の多くは、「優秀な人材を採用したい」「優秀な人材を採用すれば、組織も優秀になる」と考えています。ここで言う「優秀さ」とは、「高学歴である」「前職で圧倒的な実績を残している」など、他者よりも「優」れている、「秀」でていることです。
ですが私は逆です。優秀な人材を求めてはいません。むしろ、他者よりも「優」れていたり、「秀」でている人材は必要ない。
組織を強くするために必要なのは、「そこそこの能力を持った社員が、同じ価値観を持つ」ことです。
「既存社員よりも優秀な新卒社員を採用しない」理由は、おもに「3つ」あります。
①既存社員も新卒社員もやる気をなくすから
「学歴や成績は参考程度にしか評価しない」のが、わが社の採用基準です。
私の経験則として、「わが社の場合、難関大学・有名大学を優秀な成績で卒業した新卒社員ほど、辞めてしまう」傾向にあります。新卒社員のレベルが既存社員よりも「高すぎる」ことが原因です。
レベルが違いすぎると、既存社員も新卒社員も実力を発揮することはできない。したがって、「優秀すぎない人材」「既存社員とのレベル差が少ない人材」を採用して、「能力差が出ない組織づくり」をすることが大切です。
②組織には、さまざまな人材が必要だから
たとえばプロ野球。
プロ野球の花形は4番バッター(ホームランバッター)です。ですが、4番バッターばかりを集めても優勝できません。1番から9番まで各打順には役割があり、各選手の個性を最大限に発揮するには、役割に沿って打順を組む必要があります。
経営も野球と同じです。
「能力」(学歴)の高い人だけで組織を組んでも、組織はまとまらない。組織力を高めるためには、総合力で勝負すること。異なる役割を持った人たちが、全体の目標を共有し補完し合う「有機的なつながり」をつくることです。
わが社はすでに、さまざまな個性や特性、役割を持つ既存社員がいるので、彼らとのつながりを考えた人選が重要なのです。
③組織の均一化、標準化、平均化ができなくなるから
お客様には、どの社員が担当しても同じサービスを提供しなければなりません。そのためには、
「金太郎飴のように均整のとれた組織をつくること」
能力の高さに関係なく、
「人が入れ替わっても、誰が担当しても、同じ質の仕事ができること」
「誰に聞いても、同じ答えが返ってくること」
が重要です。
中小企業に必要なのは、突出した能力のある社員ではありません。能力も学歴も「それなり」でいいので、全員が同じ結果を出せることが大切です。
強い組織をつくるには、「均一である」=「全員が同じ価値観を持つ」ことが求められます。いくら頭が良くて能力が高くても、会社の考え方に従えない人は、結果として戦力にならない。価値観が揃っていなければ、組織はバラバラになる。
一方で、価値観が揃っていれば、社員全員で同じ戦い方ができるため、個々の能力が少しくらい劣っていても、組織力で勝負できます。