人の成長スピードには「差がある」のが正しい

畑に種を蒔いたとき、「すべての種が同じタイミングで一斉に芽吹く」ことも、「すべての芽が同じ早さで同じように成長する」こともありません。発芽日数や生育スピードには、違いがあります。早く育つ芽、大きく育つ芽もあれば、そうでない芽もあります。

人の成長も同じです。人それぞれ、成長のスピードは異なります。

開発と成長のイメージ
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです

学んだことをすぐに理解・実践できる社員もいれば、そうでない社員もいる。すぐに結果を出す社員もいれば、時間がかかる社員もいる。

それなのに多くの社長は、

「社員教育をすれば、全員一度に芽が出て、同じように育つ」
「なかなか芽が出ないのは、その社員に力がないから」

と考えています。

人の成長には「差がある」のが正しい。成長スピードも、理解力も、知識レベルも、人によって異なります。

したがって、社員教育の基本は、画一的な指導をしないこと。

「相手の成長レベル(相手の特性)に合わせた教え方をする」
「同じレベルの社員を集めて教える」

ことが大切です。

知識を教えるだけの教育や人の行動が変わらない教育は意味がない

社員教育の目的は、

「部下の行動を変え、成果を出させる」

ことです。

「知識を教えるだけの教育」や、「人の行動が変わらない教育」は無意味です。

私は、社員教育を「教育」と「育成」のセットで考えています。

【教育と育成】
■「教育」の概念……「教」えて、「育」てる

●教える……インプット。知識を与えること。
●育てる……アウトプット。振り返りをさせること。

■「育成」の概念……成果に結びつける。結果を出させる

わが社は、大型バスを貸し切って、従業員(社員、パート、アルバイト)が全営業所を視察するバスウォッチングを毎年開催しています。

バスウォッチングも、

「教えて、育てる」
「インプットしたものを、アウトプットさせる」

しくみのひとつです。

現場の視察によって、「この営業所では、こういうことをやっているのか」と、知識を得ることができます。この時間は、「教える時間」(インプット)です。

社員は50個以上、パート、アルバイトは20個以上の「気づき」をメモに取り、終了後、社長と上司にレポートを提出します。バスの中ではひとり2分、「今回勉強になったこと」「気がついたこと」「実行したいこと」などを発表・共有します。この時間は「育てる時間」(アウトプット)です。

バスウォッチングだけでなく、わが社の勉強会や懇親会の多くは、「教える時間」と「育てる時間」がセットになっています。知識を得たら、振り返るのが基本です。