優秀な人材とはどんな人か。元自衛隊陸将の小川清史さんは「日本型組織では、気が利いて一生懸命がんばる部下が評価されがちだが、軍組織では違う。やる気がある将校より、やる気がない将校のほうが全体最適につながり、出世する」という――。

※本稿は、小川清史『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

多くのビジネスマン
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経営と現場の齟齬をなくすための「作戦術」

戦略とは「未来をより良いものに変えるために、今後どうするか」というビジョンであり、時間と多くのアセットを使用してより良い未来を実現するための方法と手段です。

一方、戦術とは「いま起きていることにどう対応するか」に関する技術です。

経営(運営)レベルの戦略と現場レベルの戦術に齟齬が生じていると、組織の戦略目標の達成、すなわち全体最適の達成は難しくなります。

実はこれは軍事の世界でも大きな課題であり、かつてアメリカやロシア(ソ連)はこの「戦略と戦術の齟齬」の問題に大いに頭を悩ませていました。

そこで、戦略と戦術の中間に「作戦」というレベルを設定し、戦略がしっかりと個別の戦術に反映されているか、個別の戦術が戦略目標に寄与する内容になっているかを調整・コントロールする技術を磨いていったのです。こうして生まれたのが「作戦術」です。

個別最適をどうやって全体最適につなげるか

言葉の響きから「上手な作戦の立て方についての技術」といったイメージをされるかもしれませんが、実際は「戦略目的(全体最適)を達成するための現場(個別最適)のコントロール術」のようなものです。

とはいえ、それは上(軍本部)からの一方的なコントロールではありません。現場(前線)レベルでも戦略との整合性を意識しながら自主積極的に自らの戦術をコントロールしていきます。

つまり、組織の上も下も一丸となって「今の個別最適(戦術)をどのようにコントロールすればより良い未来の全体最適(戦略目標)につなげられるか」を考えて実行していくというわけです。

軍隊と聞くと「上からの命令は絶対」というトップダウン型の印象があるかもしれませんが、近年では、前線の兵士が上位レベルの戦略の意図を汲みながら自主積極的に動いて戦術を展開していくミッションコマンド型の軍隊が重要視されています。その理論的な基礎になっているのが作戦術なのです。