必ず上司の意見を聞いてから対応するのが正しい

本来であれば、どれほど仕事に習熟しようとも、担当者は必ず「上の意見を聞いてからお答えするので、お電話番号をください」と対応し、リーダーには「先方はこの時間に面会を希望されていますが、会議の時間と重なっています。どうしますか?」と確認すべきだったでしょう。

リーダーはリーダーで、このようなことが起こらないように担当者を教育しておくべきだったでしょう。この点では、私も部外の視点からの担当者教育が不十分だったなあ、と大いに反省しつつ本稿を書いています。

また、当時私が指揮官として何かの認定をする際にも似たようなことがありました。

決裁権者である私のもとに上がってくる報告は、その担当部署が認定上申する案件だけに限られ、担当レベルで「却下」された案件は、(決裁権者であるはずの)私のもとにまったく上がってこなかったのです。

その判断に疑問の余地がまったくないものであれば報告は不要ですが、判断の難しい案件であっても、担当部署が「却下」した場合には、私のもとに「却下した」との報告は上がってきませんでした。

「上司の手を煩わせるのは…」に潜むリスク

ある時、たまたま私が「却下」された案件を小耳に挟んだことによって、その案件について担当部署の判断を再考してもらったことがあります。担当部署では当初「過去の例と同様の案件であり、当該案件のみを特別扱いして認定するべきでない」と判断したそうです。

しかし、起きた状況事態は過去の例と同様に見えるものの、実際には過去の例とは事態発生時の前提条件が異なっていたために認定するべき案件でした。

判断を再考したことにより、事態に関係していた隊員は、無事に権利を回復することができました。もともとは、指揮官である私がしっかりと教育を事前に行き届かせていればよかった問題ではありますが、ここでは「作戦術」思考によるチームビルディングをより理解してもらうために、自分の恥を忍んでご紹介しています。

こうした特に専門的な判断を行うスタッフは、意識的にリーダーの決定権を“簒奪”するつもりは微塵みじんもなく、むしろ真面目に、一生懸命に、仕事をしているのです。

一般的にはフォロワーとして「優秀」と見なされるタイプの人たちが「気を利かせた」結果として、こうした事態が起こっていると言えます。つまり、自己の業務遂行に集中し過ぎて、本来は誰が決定するべきものであるのかについて思いを致すことなく、「これは自分が担当する案件であり、わざわざリーダーの手を煩わせるのは避けるべきだ」と「気を利かせている」ケースがほとんどなのです。