ゴールデンウイーク後に「五月病」に陥るのはなぜなのか。外資系企業で産業医を務める武神健之さんは「五月病の原因の多くは4月の過ごし方に起因していると感じています。4月からの新しい生活環境への変化に上手に適応しきれないため、翌月になってから体や心の不調が現れてしまっているのです」という――。
黒い嵐の雨雲とドラマチックな空
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「五月病」の原因は4月の過ごし方にある

年度が替わり、学校や職場などの生活環境が変わって間もない頃、目立った病気などがあるわけでもないのに「なんだか調子が良くない」と感じてしまう。その状況がゴールデンウイークを経ても改善しない。こうした症状は、一般的に「五月病」と呼ばれています。

私は、産業医として通算1万人以上の働く人と面談をしてきた経験から、五月病の原因の多くは4月の過ごし方に起因していると感じています。4月からの新しい生活環境への変化に上手に適応しきれないため、翌月になってから体や心の不調が現れてしまっているのです。

孤独な女性は家で落ち込んでいる
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疲労感が強く出ていた30代独身女性Aさん

私の面談に典型的な五月病の社員が来たのは、コロナ前のことでした。

Aさんは30代の独身女性で、私のクライアント会社にはその年の4月に転職してきました。5月下旬に産業医面談に来られたAさんの顔は覇気がなく、疲労感が強く出ていました。聞いてみると、試用期間の折り返し面談で泣いてしまい、上司から産業医面談を勧められたようでした。

キャリアアップした新しい職場で早く結果を出すべく、転職が決まった3月から語学やさらなる専門性の学びをはじめ、前の職場仲間との送迎会も辞退し、週末も全て4月からの新天地で“結果”を出すためにストイックに頑張ってきたようでした。さらに、自己学習のために睡眠時間も削っており、毎日ベッドにいる時間は4~5時間とのことでした。以前は6~7時間寝ていたことを考えると、睡眠不足感が拭えませんでした。

転職後1.5カ月ほど経ち試用期間も折り返し時期となったため、上司と仕事の評価面談があり、自分では絶対に評価が高く褒められるに違いないと思い臨んだものの、評価は普通レベルであり、今までの努力が報われないと感じ泣いてしまったとのことでした。その晩は泣いて過ごしいつ寝たかわからない、翌朝は吐き気と腹痛で遅刻、仕事も集中できず。帰宅後はもっとしっかり勉強しようと頑張るもテキストを広げると涙が溢れてできず、翌々日はとうとう休んでしまったとのことでした。

産業医面談は会社のテレワークシステム(Teams)で行ったため、彼女は自宅でしたが、午後の面談なのに起きたばかりの顔で出てきたのが印象的でした。

よくある新生活のスタートで生じがちな問題とは、過去の友人・知人たちからの隔離と、新生活への高すぎる期待が生むストレスです。このストレスが大き過ぎたり上手に対処できていないと、五月病になってしまう可能性があるのです。