変化がメンタルヘルス不調を引き起こす
3月から4月は、職場では人事異動や転職、家庭では子供の入学や進学など、公私共々の環境変化が多い時期です。多くの人にとっては前向きでやる気に満ちた時期ですが、このような時期だからこそ注意しなければならないのが、新生活への期待と不安な気持ちや、変化への適応疲労を原因とするメンタルヘルス不調です。
私の産業医面談の2事例からお話ししたいと思います。
不満やストレスはないのに眠れない日々が続くAさん
Aさんは40代、勤続7年以上のベテラン男性社員で以前、健康診断結果について相談をしに何度か産業医面談に来られたことがありました。そんなAさんが、ある年の3月中旬に産業医面談に来られました。
2月から眠れない日があり、それが最近ひどくなってきており、日中に仕事に集中できずミスをしそうで怖いこと、奥さんに顔が疲れていると指摘されて面談に来たと教えてくれました。Aさんの近況は、仕事もプライベートも特に不満やストレスはなくすごしていて、息子さんの中学校受験は無事第一志望に合格し、一家皆喜んでいるとのことでした。また、4月から奥さまが働き始めるとのことでしたが、このことは夫婦でよく話し合って決めたことであり、不平不満はないとのこと。が、よくよく聞いてみると、4月以降、ご家族の生活に起こり得る変化に対して、さまざまな不安があるようでした。
お子さんの通うことになる中高一貫校は片道1.5時間ほどかかること。中学ではクラブ活動を頑張りたいというお子さんを応援したいが、そうすると毎日の帰宅は20時を過ぎ、そこから食事やお風呂、疲れた状態での勉強などできるのだろうか、朝練があれば家は6時台に出ることになり、起床やお弁当は仕事を始めたばかりの奥さまが担当だが大丈夫なのだろうかうんぬん、考えれば考えるほど、不安な気持ちが膨らんでしまうようでした。息子さんの新生活だけでなく、10年以上仕事のブランクがあった奥さまが仕事と家事育児のバランスを保てるのか心配でしょうがないとのことでした。
さらに、ご家族二人の4月以降の新生活からくる自分の生活への影響、つまり家事分担や生活時間の変化に対して、どのようになるのかわからないがゆえの漠然とした不安もAさんにはあるようで、これらがAさんの症状の原因と推測されました。