侍ジャパンが3度目の優勝で幕を閉じたWBCだが予選参加国はわずか28だった。2022年のFIFAワールドカップ予選209と比べるとはるかに少ない。スポーツライターの酒井政人さんは「野球の母国・米国では人気度がNFLやNBAに比べて下がっている。また国内も野球人気の土台となっている高校野球は、球数制限や試合方式などで世界標準にほど遠い部分があり、課題は山積している」という――。
米国を下して優勝を決め、喜ぶ大谷(=2023年3月21日、アメリカ・フロリダ州マイアミ)
写真=AFP/時事通信フォト
米国を下して優勝を決め、喜ぶ大谷(=2023年3月21日、アメリカ・フロリダ州マイアミ)

予選参加国数…サッカーW杯209に対しWBCはたった28

「ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)」が大いに盛り上がった。侍ジャパンは米国との決勝戦を3―2で制して、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。日本戦の平均世帯視聴率は決勝までの7試合連続で40%超え(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。国内ではサッカーワールドカップ並みにヒートアップしたといえるだろう。

3月18日に開幕した選抜高校野球大会(春の甲子園、以下センバツ)ではWBCでの日本の活躍に関連したちょっとした騒動が起きた。東北高(宮城県)の選手が初回に出塁すると、自軍ベンチに向かって、WBCで侍ジャパンのラーズ・ヌートバーが披露した「ペッパーミルパフォーマンス」(両手で胡椒挽きを回すような動き)を行ったのだ。この行為が論議を呼んだ。

試合後、日本高野連は、「不要なパフォーマンスやジェスチャーは、従来より慎むようお願いしてきました。試合を楽しみたいという選手の気持ちは理解できますが、プレーで楽しんでほしい」という声明を発表。一方で東北高の佐藤洋監督は、「これだけ野球界が盛り上がっているのに、こんなことで子供たちが楽しんでいる野球を大人が止めるのかな」と語っている。ネット上では、高野連の頭の固さを示唆する意見と同時に、出塁が相手守備の失策によるものだったため、パフォーマンスは敬意を欠くとの指摘もあった。

ベースボールと、教育の一環としての野球。WBCと高校野球は全く同じスポーツでありながら、根本的に大きな違いがあるようだ。