見習うべきは高校野球のほうではないのか?
大きな違い……例えば、投手に対する球数制限もそうだ。
WBCは1次ラウンドが1試合につき65球、準々決勝は80球、準決勝以降は95球が上限。さらに登板間隔にもルールがあり、1試合で50球以上投げたら次の登板まで中4日を空けなければならない。1試合で30球以上、または2試合連続で投げた場合は、次の登板まで中1日を空けるのが決まりだ。
球数と登板間隔に規定があるのは、投手のダメージを考慮して、ケガを防止するため。そうしたケアは高校生にもあってしかるべきだが、センバツはどうなのか。
3年前から制度化されており、大会期間中、「1週間で合計500球」(夏の甲子園も同様)となっている。その後は1週間が経過するまで登板できない。
今回のWBCで侍ジャパンは全7試合で14人の投手が登板。米国との決勝では、今永昇太が先発すると、戸郷翔征、高橋宏斗、伊藤大海、大勢、ダルビッシュ有とつなぎ、最終9回は大谷翔平が締めくくった。日本勢の最多投球回は大谷の9.2イニング(135球)。最も投げた1週間の球数は86球だった。
先発投手の場合、NPBのレギュラーシーズンの先発投手は100~110球前後を中6日で投げることが多く、MLBは90~100球前後で中4日がスタンダードだ。両リーグとも球数制限が決まっているわけではないが、おおよそ約1週間で200球前後ということになる。
そう考えるとセンバツの「1週間で500球」という球数制限はWBCだけでなく、NPB、MBLと比べても、尋常ではない多さであることがわかる。以前はこうした制限が一切なかったのでいくらかマシとはいえ、高校生の身体は成長過程にあり、それを考慮するとこの球数制限ではダメージが及ぶリスクが高いと言わざるを得ない。
高校野球では侍ジャパンのように第一線の投手をたくさんそろえることはできず、1人か2人に負担がかかる構図となる。高野連は球児の安全面をもう少し考えてWBCに準ずる球数制限にしてもよいのではないだろうか。
試合方式にも両者には大きな隔たりがある。
出場チームはWBCが20で、センバツが32。試合数はWBCが最大7試合(日程は全15日間)、センバツが最大5試合(順延がなければ全14日間の予定だった)。WBCは1次ラウンドが5チームによるリーグ戦のため、出場チームは最低でも4試合をこなす(※その後は準々決勝ラウンドを勝ち抜いた4チームによるトーナメント方式で準決勝、決勝を行う)。
一方、センバツは最初からトーナメント方式だ。全国からチームを集めて1試合で半数(16校)を帰らせてしまうことになる。明らかに“費用対効果”が悪く、教育的な立場から考えても、WBCのように1次ラウンドは数チームによるリーグ戦を行う方式がよいのではないだろうか。その場合、現状は甲子園のみの会場を複数カ所にするなどの改革が必要になるが、それは他のスポーツの全国大会ではごく普通のことである。
ついでに言えば、出場登録メンバー数にも大きな違いがある。
WBCが選手30人(投手は最低14人、捕手は最低2人)で、センバツは18人。WBCの方が倍近い人数だ。多くの選手にチャンスを与えるためにも、高校野球はベンチ入りの人数をもっと増やしてもいいのではないだろうか。