野球は“オワコン化”していくのか

今回のWBCは予選を含めて28チームが参加した。世界一を決める大会としては極めて規模が小さい。2022 FIFAワールドカップ予選は209チームが参加している。

野球は、日本国内でサッカーと並ぶ“メジャースポーツ”だが、世界的に見ると、五輪種目から外されるほどの“マイナースポーツ”だ。

野球の本場でも危うい状況になっている。米国ではNFL(アメフト)がダントツの人気ナンバー1で、MLB(野球)は人気面でNBA(バスケ)に抜かれたという声も強い。

フィールド上にあるアメリカンフットボール
写真=iStock.com/8213erika
※写真はイメージです

MLBはNPBと同じような構図で若年層ファンが減少している。ワールドシリーズの全米平均視聴率は2003年に12.8%あったが、2020年は史上最低の5.1%、2021年は6.5%、2022年は6.1%と20年ほど前の約半数になっているのだ。熱心にMLBの中継を見ているのは、中高年以上のアメリカ人男性だけとも言われている。

WBCとセンバツの「球数制限」からもわかるように、野球にはグローバルスタンダード(世界標準)といえるものが存在していない。

またサッカー、バスケ、バレー、陸上、卓球などのワールドカップや世界選手権と呼ばれる大会は、各競技の国際連盟が主催しているが、WBCは状況が異なる。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が公認しているとはいえ、MLB機構とMLB選手会により立ち上げられたワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)が主催する大会なのだ。

WBCはMLB側が「野球世界一決定戦」をうたい文句にした“お金儲けの大会”との指摘も一部では出ている。収益が増えれば、当然、主催者側に入るマネーは大きくなる。今回のWBCでも準決勝の組み合わせが結果的に急遽変更され、米国と日本のカードが決勝に持ち越されたかたちになった。

米CBSによると、WBCの賞金総額は1440万ドル(約18億7200万円)で、優勝した日本は総額で賞金300万ドル(約3億9000万円)を獲得。選手と各国の団体に半分ずつ支給されるという。出場登録メンバーは30人。単純計算で日本チームの選手ひとりあたり、1300万円の支給となる。大型契約をしている大谷やダルビッシュらからすれば額は大きくないだろう。

大会MVPに輝いた大谷は言った。

「第1回大会からいろいろな先輩たちが素晴らしいゲームをした。それを見てきて、ここでやりたいという気持ちにさせてもらったのが一番、大きい。今回、優勝させてもらって、そういう子たちがまた増えてきてくれたら本当に素晴らしいこと」

侍ジャパンの意気込みはすさまじく、その戦いっぷりは野球ファンならずともワクワクさせられ、非常にエキサイティングだった。プレーする側も応援する側も日本人にとって高い熱量を持っているWBCだが、米国での認知度・人気度は日本ほどではない。WBCはこのままでいいのだろうか。

今回、MLBのトップ選手はWBCに保険をかけたが、ケガの多い選手には保険が下りなかったという。当初、MLBで通算197勝を誇るクレイトン・カーショー投手が参加予定だったが、保険の問題で出場を辞退している。このような事情もあり、米国の投手陣はすべてがトップクラスというわけではなかった。

米国は3年後の次回大会に向けて、一流の投手をたくさん招集できるか。また、国民のベースボールの人気を上向かせることができるか。さもなければ、野球の地位はさらに地盤沈下し、オワコン化してしまう可能性もゼロではないだろう。

FIFAワールドカップのように「真の世界一決定戦」となり、世界中を熱狂させられるのか。侍ジャパンの熱気がMLBの“本気”につながることを期待したい。

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