人間の関与は不可欠、ただしその内容が変わる

ただし、デジタルアーツの分野でも、人間の関与は不可欠です。重要なのは、「どのような絵がほしいのか」という指示文(「呪文」と呼ばれる)だからです。それによって成果物の出来映えが決まります。

実際、同じAIサービスを使っても、1位になった作品もあるし、選外になったものもあります。それらは、偶然の要素で決まったのでなく、人間の指示で決まったのでしょう。

つまり、必要とされる仕事の内容が、これまでとは違ってくるのです。デジタルアーツのクリエイターたちは、いまそれを強烈に意識し始めているに違いありません。論述文の場合には、人間の指示がとくに重要です。その重要性は、音楽や絵画に比べて遙かに高いのです。

そうではあっても、仕事の性格は変わってきます。文章の場合も、ITとインターネットの進展によって、作業に必要とされる技能も作業の内容も、すでに大きく変わっています。情報技術の進歩で、知的作業の内容が変わるのは、当然のことです。こうした変化は、今後もさらに続くでしょう。

生成系AIの応用で検索エンジンに革命

紹介したChatGPTや画像作成サービスは、「生成系AI」(ジェネレイティブAI)と呼ばれます。これは、データを基に、テキストや写真、動画、コード、データ、3D画像などの新しいコンテンツを数秒で生成するAIアルゴリズムのことです。

野口悠紀雄『超「超」勉強法』(プレジデント社)
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対話型生成系AIは、検索に大きな影響を与えます。

マイクロソフトは、2023年2月22日、この技術を組み込んだ検索エンジン「ビング(Bing)」を公開しました。ChatGPTは、私の質問に対して誤った答えを出しましたが、Bingは同じ問いに正しく答えました。しかも、対話をすることで、知りたいことをさらに深めていくことができます。

検索エンジンに大きな革命が起こりつつあると実感します。グーグルはこれに対抗して、チャットボット「バード(Bard)」を公開するとしました。

これからの社会では「良い質問」が決定的に重要になります。対話型検索エンジンが利用できるようになったので、質問の重要性がさらに増します。

進化した検索エンジンは、私の仕事を奪ってしまう「敵」ではなく、仕事を手助けしてくれる「味方」であると感じます。

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