投稿から「その人らしさ」を感じ取る

そのため、彼らは自身のアカウントに投稿する画像や動画にも非常にこだわりを見せています。特に投稿の雰囲気に統一感を持たせることを戦略的に行っています。「こういう雰囲気が好き」と周りに伝えることが目的になっているのです。ビジュアルコミュニケーションスキルに長けているということは、視覚的な情報から雰囲気やニュアンスを感じ取る力が高いということです。

彼らはテキストで多くを語らずとも、ビジュアルの世界で共感できる感受性を持っています。そしてSNSの写真や動画の投稿から「その人らしさ」を感じ取り、仲良くなれるポイントを見つけているのです。

【生の声】ザラザラした質感のフィルターがかかってて、暗めの写真になってて、エモい。

Z世代のこの写真や動画の「ニュアンス」を感じ取り解読するスキルこそが、ビジュアルコミュニケーションの軸になっています。

例えば、よく若者言葉として使われる「エモい」という言葉ですが、これは「エモーショナル」を意味しています。具体的には、ノスタルジック感や趣のあるさま、あるいは感傷的な状況など、感情が動かされるような場面を表現するときに使われます。

「エモい」は言語化しづらいもの

しかし、Z世代に「エモいってどういう意味?」と聞いても、このように形式化された回答は返ってきません。むしろ、「ザラザラした質感のフィルターがかかってる感じ」とか「西日でちょっとぼやけてる感じの写真」といった実感的な言い方で返答します。やはりビジュアルを起点としたニュアンスを表現しようとしているため、雰囲気や情緒的なワードが目立ちます。

そして、彼らにエモいと思う写真見せて! とお願いすると、どの人も大体同じような雰囲気の写真を見せてくれます。Z世代の間には、「エモい画像・動画」に対する視覚的な共通認識があることが分かります。彼らにとって、そのときの感情を画像や動画を介して共有することは当たり前であるからこそ、画像や動画からニュアンスを感じ取ることは容易なことなのです。

それだけでなく、それを実現するために必要な構成要素を無意識に読み取り、写真のフィルターやエフェクトを活用して再現できるのが、ビジュアルコミュニケーション・ネイティブであるZ世代なのです。