SNSネイティブの世代に特有の価値観とはどんなものか。SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏は「彼らには、顔も年齢も知らないけれど、SNSで繋がっている友達がいて、リアルで一緒に買い物に来ることもあります。リスクを嗅ぎ分け、互いの価値観を読み取るスキルが備わっています」という――。

※本稿は、長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

スマホを使用する女性
写真=iStock.com/marchmeena29
※写真はイメージです

Z世代にはリアル・デジタルの境はない

ここからは、デジタル環境によって培われたZ世代の価値観についてお話しします。

Z世代が生まれたときから存在するデジタル環境、特にSNSの存在は、Z世代の価値観に非常に大きな影響を及ぼしています。SNSが当たり前に存在することで生じた彼ら特有の価値観は、3つの観点から論じることができます。それは、「コミュニティ」「コミュニケーション」、そして「自分らしさ」です。

またデジタル環境(オンライン)が、より身近であることから、オフライン――日常生活の位置づけも変化しています。

【生の声】お店で買うか、通販で買うかはそれほど意識していない。

ビジネスの世界では、デジタル(オンライン)とリアル(オフライン)の世界を融合、または繋げていこうとする動きがありますが、Z世代からすると、あまりピンときません。なぜなら、彼らはそもそもデジタルとリアルを別々の存在と捉えておらず、意図的に融合させる必要などないからです。生まれたときから進化したデジタル環境が整っている彼らにとって、オンもオフも、その両方ともが“リアル”なのです。

SNSで知り合った友達とSHIBUYA109へ

消費行動やコミュニケーションにおいても、シームレスに行き来しています。

【生の声】AちゃんとはSNSで知り合いました。
【生の声】顔も年齢も知らないけれど、SNSで繋がっている友達がいます。

ところで、皆さんは、これまでどのように友達を作りましたか? おそらくは、学校や習い事、職場など、オフラインでの接点がきっかけで交友関係が生まれたケースがほとんどなのではないでしょうか。そしてSNSを利用する主な目的は、有名人などを除くと、オフラインで接点がある友人・知人のフォローであり、SNSでも繋がることで、既に交友関係のある人の近況を知り、コミュニケーションを取る場としているのではないでしょうか。

先ほどの生の声は、私たちがSHIBUYA109渋谷店の館内で毎月実施している来館者ヒアリングの際によく出てくるフレーズです。複数人で来館している若者たちに声をかける際には、必ず彼らの関係性を聞くようにしています。

「学校の友達」「バイト先の同僚」など、様々な組み合わせが見られます。中には「SNSで知り合った友達同士」と答えるグループもあります。

毎月約50組ほどに声をかけますが、そのうちおよそ10組はSNS経由で知り合ったグループです。特別に異質ではなく珍しい組み合わせでもありません。

このように、Z世代にとっての友達作りの場は、オフラインだけでなく、オンライン(SNS)にも拡大しています。