提案3.使途分野での自治体間の比較ができる機能をつける

環境や社会に配慮して事業を行っていて、適切な企業統治がなされている企業に投資しようというのがESG投資である。ESG投資のような仕組みをふるさと納税に取り入れられないかと考えた。社会的意義のある取り組みに優れた自治体に寄付をする仕組みである。

総務省の「令和4年度ふるさと納税に関する現況調査結果」では、ふるさと納税の使い途を「まちづくり・市民活動」「子ども・子育て」「教育・人づくり」「地域・産業振興」「スポーツ・文化振興」「観光・交流・定住促進」「環境・衛生」「安心・安全・防災」「健康・医療・福祉」「災害支援・復興」の10分野に分類している。

ほとんどの自治体が寄付金の使途を上記分野から選択できるようになっている。また、「ふるさとチョイス」には「使い道を探す」というメニューを設定している。それをクリックすると、上記のような使途分野が出てくる。一つの分野を選択すると、北から自治体が順に、もしくはその分野に関係するプロジェクトが多数出てくる構成になっている。

しかし、ここから自治体がどの分野にどれだけふるさと納税による寄付を使ったか知ることはできない。自治体のふるさと納税サイトに移動して、そこからその自治体の使途を知ることは不可能ではないが、手間がかかるし参加している自治体は1785もある。

そこで、自治体がどの分野に寄付金を充当したか、その割合を比較できるようにする仕組みを提案した。例えば、「子ども・子育て」を選択すると「子ども・子育て」分野へ寄付金の支出割合が高い順に自治体が表示される機能である。

赤ちゃんの手
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ふるさと納税の意義を具現化する仕組み

総務省は、ふるさと納税の意義として、1)納税者が寄付先を選択する制度、選択するからこそ使われ方を考えるきっかけとなる、2)お世話になった地域や応援したい地域の力になれる、3)自治体が取組をアピールできるという3つを挙げている。この提案した仕組みはこれら3つの意義を具現化する手立ての一つとなる。

寄付先を選ぶのに返礼品等の見返りという経済的合理性の軸に加えて、体験の共有、地域貢献や支援という新しい軸を提案した。これらの軸は対立するものではなく両立しうる。大手ふるさと納税ポータルサイトを見ると、返礼品としての牛肉だけで4万件以上ある。そこに新しい軸で絞り込みをかけることができる。そして、それが同時に、社会貢献だと構えることなく、気軽にでき、選択した地域や分野への支援にもなる。

そして、これは返礼品目的でふるさと納税を考えることに罪悪感を持っている人に心理的な免罪符を与える。

また、従来ふるさと納税ポータルサイトを返礼品が並んでいるコテコテのサイトと冷ややかに見ていた人達にも、新しい軸を、返礼を選ぶための補助的な軸ではなく、主軸として扱うことで、地域貢献や支援というふるさと納税の本質をアピールすることができる。

ふるさと納税制度は、自分で納税(寄付)する地域や使途を選べる特徴を持つ世界に類を見ないユニークな制度であるが、返礼品競争でその特徴が隠れ、本来の目的が見えなくなっていることが残念である。須永さんの掲げる「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンにより多くの人を巻き込んで共創していくには、新しい軸が必要である。

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