※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
無理なストレッチは逆効果になる
年齢とともに固くなった体をなんとかやわらかくしたくて、がんばってストレッチを日課にされている方は多いと思います。
しかし残念ながら、ストレッチで筋肉は柔らかくなりません。むしろ、筋肉が固い人ほど、無理に伸ばすとさらに固くなってしまうのです。
固くなった筋肉を無理に伸ばしたり、伸ばしたまま静止させたりすると、筋肉に大きな負荷がかかります。筋線維が傷ついてしまい、修復する際にさらに固くなるからです。
そもそも、なぜ、人の体は固くなってしまうのでしょうか?
筋肉をずっと動かさずにいたり、逆に負荷をかけすぎたりすると、筋肉が縮みっぱなしの状態になってそのまま伸縮性を失います。ストレスや脳の疲労、栄養不足や睡眠不足などでも筋肉は固くなります。
こうして柔軟性が低下してこわばった筋肉が、関節の動きを制限してしまいます。これが、いわゆる「体が固い人」の状態です。
柔らかな体を手に入れるためには、固くなった筋肉をゆるめ、関節の可動域を広げることが大切です。
猫背が簡単に治らないのはなぜか
「猫背」を例に説明します。猫背は背中が丸まり、肩が内側に入ってしまっている状態です。内臓が下に押されることで、お腹が出ているように見えます。スタイルが悪く見えるのです。
それだけではありません。猫背をそのままにしておくと、呼吸が浅くなり、疲れやすくなったりします。筋肉が固くなっていることで、首や肩のコリ、腰痛などを引き起こすことにつながります。
これを改善しようと、多くの人は、肩甲骨をグーッと寄せて、力ずくで胸を張るようなストレッチをします。丸まっているのを逆方向に伸ばすような動作ですね。
一瞬、猫背が治ったような気持ちになります。でも、残念ながらこれで猫背は治りません。猫背も、筋肉が固くなることで引き起こされているからです。
大胸筋という胸の筋肉が固くなって縮まると、腕の骨が内側に引っ張られます。腕は内側にねじれるので、巻き肩になります。固くなった胸や腕の筋肉は、背中の筋肉を前に引っ張ります。すると、背中の筋肉はどんどん前に引っ張られながら固くなっていきます。