「好き」を客観的な事実として伝える
具体的に見ていきましょう。
幼少期に漫画やスポーツ、音楽などに強い影響を受けて「この世界の仕事ができたら」と思った経験がある人もいらっしゃるでしょう。作品や文化に、どれだけ肯定的な影響を受けたでしょうか? 自分がどう変わったのか、その「before → after」があなたの「好き」を、客観的な事実として伝える手段になります。
私が担当した相談者さんの例をご紹介します。
この相談者さんは、もともと引きこもりでした。しかし、あるミュージシャンのファンになってから、ファン同士で交流するようになり、人と会話する楽しさを知ったと言います。この経験をきっかけに、音楽業界を志望しました。
このように、ある対象から価値を得る「前と後の変化」を話せるようになると、自分がどれだけ熱い思いを持っているかが、客観的な事実として伝えられるのです。
「大好き」「この作品がないと生きていけません」という抽象度の高い言葉を使って伝えようとするよりも、あなたの本気が伝わりやすいでしょう。
ファンを卒業して提供者の意識に切り替える
さらにあなただけの体験に根ざしているので、誰も否定できません。
借り物の志望動機が、替えの効かないあなたの言葉の志望動機へと変わります。
今、憧れの産業で働いている人たちも、かつては純粋なファンでした。
今や消費する楽しさを享受する立場から、楽しさを提供する立場になり、その業界の裏も表も知り尽くしています。裏側を見すぎて、去っていく仲間を見送った人も多々いることでしょう。
そうした事情から、採用企業はこう考えています。「ファン意識のままでいる人は、本人のためにも早めに落としておこう。つまり、「ファンのままでいてください」ということです。
裏を返せば、「ファンを卒業して、提供者の意識に切り替えられた人と働きたい」という本音が見えてきます。もちろん、ファン意識を持ち続けることは提供者になってからも大切です。「顧客の気持ちがわかる」は大きな武器になりますから。