ネガティブな感情に流されない「強いメンタル」を作るには、どうすればいいのか。レディー・ガガの主治医で、精神科医のポール・コンティさんは「誰でも大なり小なりトラウマを抱えている。そうした心の葛藤を意識して声に出してみると、感情に流されずに行動できるようになる」という――。

※本稿は、ポール・コンティ『trauma トラウマ 誰もが傷ついた心をもっている』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

2022年3月13日、米歌手レディー・ガガさん(イギリス・ロンドン)
写真=AFP/時事通信フォト
2022年3月13日、米歌手レディー・ガガさん(イギリス・ロンドン)

自分自身が自分の味方になる

トラウマに立ち向かうには、味方に頼ることが大切だ。家族や友人、医師やセラピスト、ペット、サポートグループ、薬、庭、なんでもいい。

ほかの人の助けがあれば、本来の自分を思い出し、自分の本当の地図が見つけやすくなる。人生で行きたい場所に向かうための、新しい進路の計画に助言ももらえる。

とはいえ、自分にとってのよりよき味方になることも学ばなければならない。これもさまざまなかたちをとる。ポジティブな心の声、心をこめたセルフケア、自信、自己主張、健康について熟慮した選択をする習慣、仕事、いっしょに過ごす人。

ときどき子どものころによく観ていた昔のアニメを思い出す。ほとんどは頭を使わずに観られる軽い作品だったが、バックにはすばらしい音楽が流れていることが多く、ときには人生の教訓も含まれていた。

悪いことをしようかどうか考えているキャラクターの肩の上に天使と悪魔が現れるのを何度も見たのを覚えている。天使と悪魔はそれぞれ自分の主張をし、おたがいに言い合い(取っ組み合いになることも多い)、その人物は最終的に選択をし、予想通りの結果になる。子どもながらに、同じようなことが自分にも起こっているのがわかっていた。

心の中には「天使」と「悪魔」がいる

ママが別の部屋で電話をしているあいだにクッキーの瓶に手を伸ばすべきだろうか。ぼくが欲しかったおもちゃで遊んでいる弟を後ろから押してやるべきだろうか。プラスとマイナスを比べて、選択肢を検討して、ときには自分の片方の肩にいる天使と反対側にいる悪魔を思い描くことまであった。昔のアニメーターたちがあのような表現方法を使ったのはたまたまではないと思う。なぜなら、私たちのほとんどが感情移入できるからだ。私たちはそれぞれひとつの心を持っているが、そこにはさまざまな面がある。

自分のなかに、はっきりと正反対のことを示す天使と悪魔のような人格や声を経験した人はめったにいないだろうが、それは、そのプロセスが意識下で起こっているからだ。私たちの心は氷山によく似ている。意識的な部分、はっきりわかっていて、世界を体験し、日々の活動をしている部分は、氷山の姿が見える水上の部分だ。しかし、脳内で起こっていることの大半は、水中に隠れている巨大な氷のかたまりなのだ。恐怖や恥や偏見は、この水面下で暗躍する。