「寝る2〜3時間前は目が覚めるようにできている」

私が睡眠について最初に学んだのが日本睡眠教育機構という団体です。

そこで睡眠改善の上級資格のための授業があり、先生が唐突に「『早寝早起き』という言葉をみなさんはどう思いますか?」と受講者に尋ねました。

その時の受講生の一人が「素晴らしい言葉だと思います。これを広げていくのが私たちだと思います」と、いかにも優等生らしい回答をしました。

受講者の全員がその回答を誉めてくれるのだろうと思った瞬間、先生は「『早寝早起き』という言葉のせいで日本人みんなが睡眠改善に失敗しているんですよ!」とかなり強い口調で言いました。

どういうことなのかみんなが理解できないでいると、先生は「みなさん、いつもの寝る時間より2時間早く寝ることって簡単にできますか?」とふたたび質問されました。そして今度は意地悪をせず、次のように強く語りました。

「実は寝る2〜3時間前は人間は目が覚めるようにできているのです。だから、人間は早寝することは基本的にできません」
「その代わり、早起きは頑張れば可能です。ですから睡眠を見直して、早く寝て早く起きられるようになるには、早起きから始めるしか成功しないのです。だから私たちは『早寝早起き』という言葉を『早起き早寝』にするために日夜頑張っているのです」

ちなみにその後、私は私以外で「早起き早寝」を提唱している人に会ったことがありませんので、まだ世の中にはほとんど浸透していないものと思われます。

実際に睡眠改善指導の現場では、早寝から始めて失敗した人が多いです。

早起きに成功するパターンで確実なのは30分ずらす方法です。このやり方だと9割以上が成功します。

体内時計がずれるのに1~2週間かかりますので、完全に慣れたらまた30分ずらしていきます。早起きの必要に迫られて時間がない場合、2時間までなら成功率は7割を超えます。

ただし、始めて3週間は朝調子が悪かったり、日中に急激に眠くなって重大な事故や失敗につながることもあるので、十分に気をつけてシフトしてください。

「早起き早寝」に成功するパターン
イラストレーション=髙栁浩太郎