子どもは「全権を持った管理人」になれる

信託契約で子どもは、任されるので「受託者」になります。親は、自分の財産の管理・処分を委託するので「委託者」になります。

こうして「受託者」である子どもは、親の財産の管理・処分ができるようになります。その結果の利益や損は、親のものになりますから、親は「受益者」でもあります。

自分(親)の財産で自分(親)が利益を得るので、贈与税もかかりません。

簡単にいえば「子どもは、全権を持った管理人」になれるのです。

ですから、引き続き親の財産であることに変わりはありません。この点、親に安心してもらうことが大切です。

ですから、親が亡くなったときに、信託財産は、相続財産となります。

これが家族信託の大まかな仕組みです。

図表1の中央にある「信託財産」は、通常は、実家と現金です。現金は、「実家の管理」のために必要な額と、親の預金に余裕があれば、さらに「老人ホームの入居一時金」に充てられる額を加えた額というのが基本です。

「実家の管理」とは、固定資産税と火災保険や将来の修繕費の見積額となります。

ここで重要なのが、「固定資産税や火災保険はいくら?」と親に聞けるということです。

親子が喜ぶ家族信託の7つのメリット

以後、いろいろな場面で、こうして、親のために必要なことをするために、コミュニケーションを図り、財産の明細を少しずつ明らかにしていくのです。

年間30万円なら、とりあえずは10年分の300万円として、我が家のケースでは、修繕費なども余裕を大幅に見込んで1000万円としました。

大目にしておいて、親が必要なときには、基本的には親の財産なので、親に戻すこともできます。

「老人ホームの入居一時金」は、親の預金に余裕がある場合で結構です。実家を売って入居一時金に充てることができるからです。それでも、入居時に直ぐに実家が売れるわけではありませんので、信託財産にしておくとスムーズに対応できます。

金額については、地域によって様々ですし、まだまだ将来のことですから、わかりませんので、半ばエイヤーと決めます。とりあえず有料老人ホームの入居一時金の平均額1000万円としておきましょうか。

これでいつ親が認知症になっても大丈夫です。図表2のように家族信託には7つのメリットがあります。信託財産にした親の預金は、受託者である子どもが引き出せます。自宅での24時間介護も、老人ホームの入居一時金にも親の預金で対応できます。だから、相続後にもめやすい、「子どもの立て替え払い」をする必要もありません。