※本稿は、牧口晴一『日本一シンプルな相続対策』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
相続対策の起点は「肉体の死」ではない
「お前は既に死んでいる!」「えっ!?」と気づくやいなや、断末魔の叫び!
おなじみの『北斗の拳』のクライマックスです。笑い事じゃありません。あなたの、そしてあなたの親にふりかかる現実なのです。
これまでの相続の本は、「相続が起きたらどうするか?」「どう分けよう」、「そうなる前の相続の対策として生前贈与や遺言を……」がテーマでした。つまり対策の起点が相続のときなのです。
しかし現実は、肉体の死よりも先に、認知症になるわけですから、相続対策が手遅れになるのです。そして、相続対策以前に、生きている間の介護費用にも資金不足(実は預金はあるのに使えない)を起こしてしまい、子どもに負担を強いてしまうのです。
親思いのあなたは、きっとこうお考えでしょう。
「いつか親が亡くなったときのために、相続について知っておこう」
逆に親御さんであったなら「自分が死んでも子どもに迷惑をかけたくない」と。
しかし、この「いつか」とは心臓が止まるときでしょうか? いいえ、実際にはそれより約8年(男性)~12年(女性)早く「そのとき」はやって来る可能性が高いのです。
「法的な死」を迎えると財産が凍結される
認知症が進み、判断能力がなくなると、重要な法律行為ができなくなります。
そのとき「既に死んでいる」それが「法的な死」と私が呼んでいるものです。もちろん、正式な法律上の死は肉体の死ですが、あえてわかりやすいように言います。つまり、「法的な判断ができなくなる日」が訪れると、もう対策はできません。
認知症になると、親は自分の財産を自由に処分できなくなります。子どもが代わって親の預金をおろすこともできなくなります。老人ホームに入居した後、空き家になった実家を売却することもできません。
相続後の預金凍結は、遺産分割までの一時のことです。しかし、認知症になると亡くなるまでの平均10年間、親の財産は凍結されるのです。もちろん、他の相続対策である生前贈与も、遺言も書けなくなってしまうのです。