10年間の費用は初期費用30~100万円のみ

家族信託なら、最初のときだけ、登記と専門家の費用がかかります。財産額にもよりますが、登記の費用を除き30~100万円ほどです。

専門家に任せても、成年後見人制度で、アリ地獄に陥ったうえに、770万円かかるより、結局は安上がりなのです。

専門家の費用は、初期費用が5万円程度(信託財産が500万円の金銭のみの場合)からあります。しかし、別途契約書作成費用・登記費用などがかかります。

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そして毎年の維持費用に3万円ほどにして分割払いのようにしているのです。

詳しくは、財産によって変わりますが、総合計では、先の100万円程度となると思います。ただし、短期間で亡くなると毎年の維持費がストップするので、安くなるかもしれません。「トリニティ・テクノロジー」や「ファミトラ」を検索してください。

手間と安全性を考えれば、家族信託の専門家に依頼した方がよいに決まっていますが、実はここが悩みどころです。

成年後見人制度のアリ地獄に陥るよりは遥かに安いのですが、まだその意識が醸成されていないため、専門家費用に対して「高い!」というイメージが先にきているようです。

私のお客様でもそうです。そうこう迷っているうちに手遅れになっています。

最低6万円で手続きする方法もある

費用面で躊躇ちゅうちょする方は、ご自身の手間をかければ、できなくはありません。手遅れになるよりは、と考え苦肉の策として、自分で行う方法を考えたのです。

本書の第3章で詳しく解説していますが、以下のように最低6万円ほどの登記の費用等だけで可能です。

手順1は、公証人役場で契約書を作ってもらうこと。(約3万円)
手順2は、実家の信託登記を法務局でする。(約3万円)
手順3は、銀行で信託用の口座を作る。(無料)そしてその後、管理開始。

それでも、専門家による認知症への対策の家族信託は徐々に増えてきました。「家族信託」の件数は、登記の件数を調べれば明らかです。日本公証人連合会の初調査で、2018年に2223件だったことがわかりました。家族信託は公正証書でする義務まではないので、総数はもっと多いでしょう。

それに対して、成年後見制度は伸び悩んでいます。つまり、庶民はちゃんと良し悪しを嗅ぎ分けて合理的な選択をしているのです。

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