ネット検索の常識が覆る?
最近、“チャットGPT”に代表される、対話型の人工知能(AI)への注目度が高まっている。これまでの旧来型ITビジネスモデルが、ここへきてやや行き詰まりを見せる中、AIを使った対話型の新しい成長テーマとして浮上してきた。
チャットGPTは、世界のIT業界の構造を大きく変える可能性を秘めている。特に、マイクロソフトの同分野の取り組みはかなり積極的で、多くの投資家のチャットGPTへの注目度は急速に高まっている。
チャットGPTの一つのメリットは、利用者が一定のキーワードを入力すると、AIを使って自然な文書を作成することができる。そのメリットは大きい。実際問題として、AIがわれわれにとってより身近になるといってもよいだろう。また、これまでキーボードなどで入力してきたネット検索の常識が覆ることにもなりそうだ。そうしたAI技術利用は、世界経済の効率性向上に大きく寄与すると期待される。
一方、単純なAIの利用にはデメリットもありそうだ。AIが提示した情報が本当に正しいとは限らない。間違いがあるかもしれない。利用方法によっては、差別の助長など社会心理にマイナスの影響を与えることも考えられる。今後、より安心できる対話型AIの普及を目指して、米中を中心にIT先端分野での競争は激化するものとみられる。そうした変化に、われわれ一人ひとりがしっかりと対応する必要がある。
わずか2カ月間で利用者が1億人を突破
チャットGPTは、米国のAI研究開発企業である“オープンAI”が開発した言語分野のAIの一つだ。GPTとはGenerative Pre-trained Transformerの略で、AIを使って作り上げた文章作成のための言語モデルだ。その言葉はとっつきにくいが、イメージとしては、すでに利用されている自動応答システムである“チャットボット”に近い。
ただ、その性能は従来のチャットボットに使われてきたAIを上回る。2022年11月末にオープンAIはチャットGPTを公開した。その後2カ月間で利用者は1億人を突破したと報じられた。世界最速での1億人突破とみられる。友人と話しているような感覚で利用できるAIの登場によって、世界のネット業界には大きな変革が起きつつある。
2015年、オープンAIは、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏らの出資を受け設立された。2019年には、マイクロソフトが10億ドル(1ドル=130円換算で1300億円)を出資した。2020年、オープンAIは、世界に衝撃を与えた“GPT-3”と呼ばれる言語型AIを発表した。
GPT-3は1750億個のパラメータ(変数)を用いる。その数は従来のAIの100倍とみられる。それによってGPT-3は大量の文書を学び、自然な文書を作成する能力を実現した。今すぐではないが、その技術は世界の人々の生き方を劇的に変える可能性を秘める。