一緒にサンタクロース村まで出かけたのに…

私は田舎育ちで、人と違うことをすると悪目立ちしてしまいやすい環境で育ってきたので、みんながみんな自分の好きなことを突きつめていくと、こんな心地良い距離感ができるんだというのが衝撃的でした。

これは、拙著『北欧こじらせ日記 移住決定編』(世界文化社)でも触れているのですが、フィンランドのサンタクロース村に友人とドライブしたことがあるんです。私からの提案で、友だちが車の運転をして連れって行ってくれたのですが、2時間もドライブしてきたのに、友だちは「自分はここで待っている」と言って、村に入らなかったんですね。

日本だったら興味がなくても一緒に来ますよね。それが「私、疲れたから寝てるね。どうぞ楽しんできて」みたいな。一緒に旅をしていても、それぞれの時間の過ごし方や自分の感性、感覚、感情を大事にするというのに驚きながら、同時にとても心地よいなと思ったんです。私も気を遣わなくて、嬉しかったですね。

サンタクロース村
撮影=北欧週末部chika
サンタクロース村

ヨーロッパでは「青い目の日本人」と言われている

――日本人とは違うけど、面白い感覚ですね。

そうなんです。でも共通するところもあるのかなと感じています。実はヨーロッパでは、「フィンランド人は目の青い日本人」といわれることがあると、フィンランド人の友だちが教えてくれたことがあります。たしかに、シャイでオタク気質なところは、日本人に似ているかもしれません。

ただ、自立した人が多いながらも「誰かに親切をする」ことに喜びを感じる人も多いようで、困ったことがあると温かく手を差し伸べてくれる方が多いです。でもこちらから助けてということを言わなければ、無理に相手のパーソナルスペースに入り込まないという距離感もあります。

この間バス停でバスを待っていたんですが、待っている1人1人の感覚がほんとにフィジカルにちゃんと等間隔にとられていて、京都の鴨川みたいだなと感じて微笑ましかったです。国土は日本と同じぐらいだけど、人口が北海道ぐらいしかないので、1人当たりの使えるスペースが広いというのもあるとは思うんですけれども。ちょっとシャイで、自分のパーソナルスペースを持ちつつ、調和も大事にする。人に優しく、気を遣いつつも自分らしさも忘れない。そんなところに、日本との共通点を感じることがあります。

相手が年上でもデート相手でも基本割り勘

ここでフィンランドについて、興味深いデータを紹介しておく。

首相……サンナ・マリン(37歳、女性)
人口……554万人(日本1億2395万人)
一人当たり国内総生産(GDP)……54857ドル(同42230ドル)
時間当たり労働生産性……61.9ドル(同47.3ドル)
ジェンダーギャップ指数……2位(同116位)*2022年
失業率……6.4%(同2.6%)*2022年

――日本と比較してまず目を引く相違点は、ジェンダーギャップ指数です(男女間の不均衡を示す数で、上位であるほど男女間の不均衡が少ない)。日本よりフィンランドは遥かに男女平等化が進んでいるとされていますが、実感としてどうですか。

これは職場でもプライベートでもすごく感じますね。日本で寿司職人としてアルバイトをしていたとき、女性だからちょっと珍しがられたり、セクハラじゃないですけど、からかわれたりしたのは日常茶飯事だったんです。けれどフィンランドに来てから、そういった経験を一切していないことに気づきました

一方で、逆に特別扱いもされない。力仕事や労働時間も、基本的にもちろん男性とイコールです。年上の男友達と食事に行ったときや、デートのシーンでも支払いは割り勘が基本だそうです。

――一方で失業率は日本より高いですね。

たしかにそうですね。ただ社会保障が充実しているので、失業をきっかけに「学び直し」をして他の業界にチャレンジする人もいます。

――時間当たりの労働生産性は日本より高い。

長く働くより、常に効率よく働くことを求められています。前に1時間かかっていたものを30分でできたら、そのぶん早く帰っていいよと言われることもあります。決められた仕事量を終えることができるのであれば、遅めに出勤してもいいし、逆に終わらなければ終わるまで責任を持って終わらせようという環境です。自分のスキルを伸ばした分、自分の時間ができるのはモチベーションにつながりやすいと感じました。