宗教法人格の売買相場は寺院年収の3倍が目安
「立地条件にもよりますが、慣習的には寺院年収の3倍程度の金額で取引されています」(関西在住の住職)
地方寺院の場合は数百万〜2000万円、都市部の立地のよい寺の場合は億円単位になる場合もある。宗教法人や公益法人の売買を手がけるブローカーが存在する。
檀家がいる寺よりも、青空寺院(伽藍が朽ちてなくなり、土地だけのペーパー法人)のほうが使い勝手がよいとされる。寺院は檀家組織があり、住職が不自然に交替した場合や売却しようとした際には警戒される可能性があるからだ。
また、大手宗派(包括宗教法人)に所属する寺院(被包括寺院)の売買はハードルが高い。住職(代表役員)の名義変更にあたって、責任役員や檀家総代などの実印を押した書類を整え、さらに所轄官庁である自治体に届け出る必要があるからだ。
しかし、宗派から離脱した「単立寺院」ならば、宗派への届け出は不要だ。宗教法人格の売買をするために、自由度の高い単立寺院になる動きが加速している。
売買が成立すれば、買い主は法人の登記を書き換えることになる。宗教法人は新たに許認可を受ける場合は、かなりハードルが高い。宗教法人としての活動実績などが審査され、申請から認可を受けるまでに10年ほどかかる場合がある。
しかし、古くから継承されてきた寺院(特に単立寺院)の場合、住職の死亡時や代替わりの時には名義変更だけで寺院の代表役員になれる。所轄の都道府県に提出する書類に不備がなければ、宗教法人の代表として登記することができる。
単立寺院のすべてが売買を目的としたものではないが、しかし、文化庁「宗教年鑑 令和4年版」によれば、2012(平成24)年から21(令和3)年までの10年間で、377カ寺も単立寺院が増えている(6844カ寺→7221カ寺)ことは、決して無視できない事象であろう。
所轄官庁の文化庁は、売買目当ての単立寺院化への規制強化を検討すべき時期にきていると思う。
しかし、なぜそれほど、寺院が魅力なのか。