「旅だと思えば、楽しいものです」
私の本を何冊か手がけてくれたことのある出版プロデューサーは、コロナ禍以前から、雨の日以外、仕事の移動には自転車を使っていました。
どこに行くにも便利な都内中央区に住んでいることもあって、私との打ち合わせ場所でも、地下鉄も使わず自転車です。
地下鉄なら乗り換えを入れて35分程度。自転車でもほぼ同じ時間でしょうか。
彼の場合、高級ロードバイクでも、いま大流行の電動アシスト自転車でもなく、いわゆるママチャリです。
私との打ち合わせ場所にくるまでには、きつい上り坂もありますから、結構、体力も使うはずです。
しかし、還暦をとっくに過ぎた彼はいいます。
「脚の筋肉が衰えてきていますから、筋トレです」
便秘気味であるために、その解消を兼ねているのだとも明かしてくれました。
さらにこういいます。
「上り坂が多いといっても、当然、帰りは下り坂ですから。それに小さな旅だと思えば、楽しいものです。旅といっても、GO TO TRAVELの対象にはなりませんが……」
冗談まじりにいう彼の顔や腕は日焼けしていましたから、セロトニンの分泌も十分でしょう。
彼はコロナ禍にあっても、ほとんど自転車移動でしたから、電車移動のように神経質に人込みを気にする必要もなかったといいます。