韓国のビジネスモデルをまねたJINS

機能性とデザイン性、そしてコストパフォーマンスに優れたメガネで、メガネの常識を変え続ける「JINS」は、韓国におけるメガネのビジネスモデルを真似ることからスタートし、その先でオリジナリティーを生み出すことによって飛躍を遂げたブランドだ。

JINSの誕生のきっかけは、2000年、もともと雑貨店を経営していた創業者が、出張で韓国を訪れた際に3000円で売られているメガネに出会ったことにある。当時の日本では安くても3万円はするメガネが、10分の1の低価格で売られていて、なおかつ15分ほどで購入できることに衝撃を受けた。

15分を指すキッチンタイマー
写真=iStock.com/Devenorr
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日本では「メガネは高価格」が当たり前だったのに対して、韓国ではなぜそれほど安く、早くメガネの販売が実現できるのか。疑問に思って調べてみると、それまでの日本におけるメガネ作りは、業界の流通経路が複雑で、中間コストと利幅が大きいために高価格になっていたことが分かった。そこで、不要な中間コストを徹底的に削減し、企画・製造・販売を自社ですべて行うことで、「優れたメガネを安く売る」韓国モデルを真似てビジネスをスタートさせた。

後追いライバルとの差別化

1つ5000円のメガネの販売を始めると、すぐに話題を呼んで飛ぶように売れた。しかし、同じように真似て後追いしてくるライバルが続々と増えてくると、格安メガネの競争が激化し、韓国モデルの真似だけでは差別化ができなくなっていった。真似の先のオリジナリティーが必要になったのだ。

そこでJINSは、「メガネをかけるすべての人に、よく見える、よく魅せるメガネを、市場最低、最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」というビジョンを掲げ、メガネの王道で勝負する覚悟を決めて、新しい価値の創出にチャレンジしていった。そうして生み出されたのが、これまでにない軽さを追求した軽量メガネ「Airframe」である。スイスの医療機器用素材メーカーの開発した、軽くて安全で、弾力性と復元力に優れた素材と、日本人の顔に合うよう研究された抜群のフィット感が評判を呼び、2009年の発売直後から人気を集め、累計販売本数が2200万本を突破するほどの大ヒット商品になった。

その後、「Magnify Life」にビジョンを更新し、「人々の生き方そのものを豊かに広げ、これまでにない体験へ導く」を目指して、さらに幅広く、視力の良い人にとっても価値あるメガネを次々と生み出していっている。パソコンやスマートフォンのブルーライトをカットすることで目の負担を軽減する「JINS SCREEN」。花粉や飛沫が目に入ることを防ぐ「JINS PROTECT」。まばたきや視線、身体の動きを計測するセンサーを搭載し、専用アプリと連動することで心身の健康をサポートする「JINS MEME」。こうした新しい機能性を備えたメガネを通じて、新たなニーズを創造している。JINSは、韓国モデルの真似から始め、その先にオリジナリティーを生み出し、成功をつかんだ好事例といえる。