ライバルを真似て多岐なサービスを展開するスターバックス
1996年の上陸から、日本で1700店舗以上を展開する最大のコーヒーチェーン「スターバックス」は、世界では3万4000店舗を超えてさらなる拡大を目指している。スターバックスは、店舗作りやメニュー開発においてオリジナリティーを重視しているが、強力なライバルの出現に際しては、そのライバルのサービスを真似ることで対抗している。
小説『白鯨』に登場する航海士「スターバック」にちなんで名づけられたスターバックスは、1971年にアメリカ西海岸のシアトルで1号店をオープンさせると全米に店舗を拡大していき、北米エリア以外で初の出店となった日本の第1号店は1996年に銀座でオープンした。お茶文化のある日本でも普及を進め、薄味なアメリカンコーヒーのイメージを変えて、味わい深いおいしいコーヒーとして、朝の目覚め、食後の一杯、仕事のお供など、多くの人のライフスタイルに浸透している。
スターバックスの魅力は、日替わりでさまざまな豆を楽しめるラインナップ、豊富なカスタマイズ・サービス、期間や地域を限定したフラペチーノなどの新味、そして自宅・職場に続く3つ目の落ち着ける空間「サードプレイス」の提供など、多岐にわたる。商品開発においては、流行を追うよりも、季節性や地域性を重視した限定味や、スターバックスらしさを追求した他にはない味が重視されている。その一方、強力なライバルが出現すれば、すぐにそのサービスを真似て対抗する柔軟さも持ち合わせている。
サードプレイスが売りだったスターバックス
スターバックスは、中国にコーヒー文化を根付かせた立役者でもある。1999年、北京に中国1号店をオープンして以来、約6000店舗まで展開を拡大させている。しかし、中国では近年、新興のカフェ・ベンチャーが続々と現れ、スターバックスの強力なライバルとなっている。中でも、創業時からスターバックスを名指しでライバル視し、2018年からわずか5年で約7000店舗と、中国最多の店舗数を展開するまでに飛躍を遂げているのがラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)だ。
サードプレイスとしてゆっくりくつろげる空間の提供を特徴とするスターバックスとは対照的に、ラッキンコーヒーは、テイクアウトとデリバリーが主で、事前のモバイルオーダーによって待ち時間0で安くておいしいコーヒーを提供することが特徴だ。そのため、ラッキンコーヒーは大型店舗を構える必要がなく、数人の従業員が入れるキッチン・スペースと受け渡し窓口さえあれば十分で、オフィス街のビルの小さなスペースに座席なしで出店するなどして店舗を急拡大させた。