賃貸に住み続ける夫婦は、老後どうするか
【Bさんのケース】
2年後に定年を迎えるBさんは、子どもの教育資金が一段落した5年前から、定年後の住まいを意識するようになりました。それまでは職場の異動や転勤、転職の可能性があること、子どもの教育費が予想外に膨れるかもしれないこと、収入上昇が見込みにくいことなどが不安材料となって、住宅購入は先送りしてきました。
購入を検討したこともありましたが、不安なく返せそうなローン返済額にしようと思うと選択肢が狭まり、通勤時間が長くなったり、駅から遠かったり、保育園への入園が難しそうだったりと、思うに任せられませんでした。
結局、共働きの収入を維持することを優先し、お互いの職場に通いやすく、子育てと仕事の両立がしやすい地域を選んで、賃貸住まいをしてきました。5年前に65歳からの年金予想額を確認したところ、2人分の年金があれば、家賃は問題なく払い続けられそうだと思いました。
夫婦どちらかに万一のことがあった場合や介護施設に入居した場合も、それぞれの年金で暮らしは何とかなりそうです。子どもの教育費から解放されてホッとしたタイミングでしたが、夫婦ともに定年まで働くモチベーションが上がりました。
ライフステージごとに最良の住まい方を考える
ただ、「絶対に家は持たない」と決めていたわけではありません。自分たちの気持ちがどうなっていくかは分かりませんし、突発的な出来事が起こるかもしれないので、定年までの間にしっかりお金をためようと思いました。
5年後の現在、住みたいと思っている地域の相場をリサーチしてみると、これまでの貯蓄と2人分の退職金がありますから、住宅ローンを組むことなく確保できそうです。とりあえず数年間は賃貸住まいをしてみて、ずっと住み続けたいと思えば購入も視野に入れようと思っています。
Bさんのケースは、さまざまな不確定要素が多い現役時代は賃貸住まいを続け、定年が近づいて不確定要素が消えていった段階で、次のライフステージとそれにふさわしい住まい方を考え始めるというものでした。定年後の暮らしが数十年におよぶ時代だからこそ、長期的なプランニングとフレキシビリティ、リスクコントロールの視点が欠かせません。
一見、家賃よりローン返済額のほうが安いが…
【Cさんのケース】
現在15万円の家賃を払っているCさんは、そろそろ30歳になる節目でもあり、住宅購入を検討し始めました。ちょうど手ごろな新築マンションが見つかり、毎月のローン返済額が家賃より安く済むことから、購入の方向に気持ちが傾いています。親からも「家賃を払うなんてもったいないから早く買ったほうがいい」と勧められています。
ただ大きな買い物だけに、納得してから買いたいと思ったCさんは、購入した場合と賃貸の場合との、大まかなコスト比較をしてみることにしました。前提条件は次のとおりです。