ダメなメールのやり取り

コミュニケーションにおいて「こちら側から」考えているか、「向こう側から」考えているかは、電子メールの使い方にもあらわれます。

図表2を見てください。ここで比較しているのは、電子メールでコミュニケーションしているときに「こちら側から」考えている(ベクトルが逆転していない)人と「向こう側から」考えている(ベクトルが逆転している)人との姿勢の違いです。

根本的な考えとして違っているのは、ベクトルが逆転している人は「自分が一生懸命伝えているのに、ほとんど伝わってはいない」という前提で考えていることです。ここに、「比較的仕事のできる」人の陥りがちな罠があります。

相手はこちらの言ったことはほとんど理解していない

「こちら側から」考えている人は、「自分はちゃんと人のメールを読んでいるんだから、相手も読んでいて当然。あるいは、そうあるべき」と勝手に決めつけてコミュニケーションしがちです。そして伝わっていないことがわかると、いかに自分が適切に「メールを送った」か、何度も同じことを「伝えた」かを主張します。

オフィスでパソコンの前で拳を握り怒っている男性
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じつは、電子メールにかぎらずコミュニケーション上のトラブルの多くは、この構図の上で起こっています。コミュニケーションの「目的」と「手段」の逆転の話を思い出してください。伝え手が「いかに正しいか」の証明をしはじめてしまうケースは、コミュニケーションの誤解が生じた際に非常によくある話です。

「コミュニケーションでは受け手が神様」「伝わらなければどんな手段を使っても何の意味もない」という原則を理解していれば、これがいかに実のない議論かがおわかりいただけるでしょう。

「伝え手が正しい」ことを証明する必要があるのは、訴訟などの公式な争いになった場合の証拠としてのみです。

「相手に伝えてアクションにつなげてもらうことを目的とする」通常のコミュニケーションでは、まったく意味がないことであると肝に銘じておくべきだと思います。相手はこちらの言ったことなど、ほとんど理解していないと考えるぐらいでちょうどいいでしょう。