新しい職場にいち早くなじむためには、どうすればいいのか。人材コンサルタントの井上和幸さんは「前職での実績やキャリアを前面に出すと失敗する。功を焦らず、まずは職場で良好な人間関係を築くことから始めるべきだ」という――。
新職場で好スタートを決めるために気をつけるべきこと
4月から新しい職場で働き始めたという方は多いでしょう。そこで好発進をするためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。
私は現在、幹部クラス(役員、部課長)に特化した転職とキャリア形成を支援しています。そのなかで、新しい職場でのスタートダッシュに失敗する人たちを数多く見てきました。実例をもとに、私が見てきた「3つの落とし穴」を紹介しましょう。
落とし穴①「いきなりマウントを取ってしまう」
新しい職場に移った人は、着任後、「まずは力量を見せねば」と気合が入るものです。
ここでやってはいけないのは、意気揚々と、いきなり改革案を提示したりすることです。
外資IT企業から日系大手消費財メーカーに転職したAさん(45歳)は、DXを推進したい同社にスカウトされて入社しました。
その期待値を十分に感じていたAさんは、着任早々メンバーたちに「次回、プロジェクトキックオフ会議を開催したいと思います」と周知します。
寝る間も惜しんでプランを作成し、当日の会議の段取りもあれこれ思案したそうです。
「まず、これを話して、そこで皆に感想を聞き、その上でこの計画をお披露目する。よし、これで完璧だ。皆、俺を見る目が変わるに違いない」とその時は笑みがこぼれたと言います。
当日、自信満々の新規プロジェクトプランを流れに沿ってプレゼンしていきますが、ふと、Aさんは気がつきます。
「あれ、皆、なんか食いつきが悪いな……」
途中、質問や感想を投げかけてみても、返答は返ってきません。参加者たちの顔を見ていくと、誰もが微妙な表情でした。
結局、キックオフ会議は事前のイメージとは裏腹に、重い沈黙のまま終了。次回に向けてのステップも見えなくなってしまいました。いったい、Aさんの何がまずかったのでしょうか?