過去10年分のカルテ

2010年4月。宮畑さんは67歳になった母親を東京の精神科に通わせながら、関西在住時代に母親がかかっていた病院から過去10年分のカルテを取り寄せていた。宮畑さんは長年母親と疎遠にしていたため、母親の通院先も病歴もどんな薬を飲んできたのかも詳しくわからないことに唇をかんだ。

5月。母親の約10年間のカルテが届き、宮畑さんは妻と妹と確認したところ、母親は、

・甲状腺機能低下症
・自律神経失調症
・不眠症

を患っていたことがわかった。このうち甲状腺機能低下症は、母親が40代の頃発症して以降、ずっと通院・服薬していることを宮畑さんも知っていた。

その後、「抑うつ神経症」の診断がつき、薬が増えている。甲状腺機能低下症が原因でホルモンバランスを崩し、うつや不眠を起こしたのかもしれない。

カルテを確認した結果、約10年間の治療で、母親が悪くなった要因は、

・同棲していた男性の介護疲れ
・処方された薬の誤用

ではないかという結論に至った。

医師の机
写真=iStock.com/takasuu
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カルテと東京の精神科医の話から判断するに、母親がおかしくなったきっかけは、「一緒に暮らしていた男性のがん判明」のようだった。

「母は、自分の母親を約20年間自宅で介護しており、一人では手に負えなくなったため、2人の妹と共に介護し、それでも在宅は難しい状態になったので、施設に入れたという経験をしています。そのため、再び自分が介護する立場になることを覚悟し、先が見えない精神的なストレスを過大に抱えていたところに高熱を出し、入院したのがとどめになったのでしょう」

宮畑さんたちは東京の精神科医に相談し、少しずつ減薬を進めた。すると徐々に母親は快活さを取り戻し、わがままが減っていった。