仕出し弁当業界大手の玉子屋(東京都大田区)は、元番長や元暴走族といった「悪ガキ」を積極的に採用している。菅原勇一郎社長は「大卒社員よりも中卒、高卒の社員たちのほうが頭の回転が速く、リーダーシップも取れる。中小企業にとっては、こういう『原石』をいかに見極めるかが重要になる」という――。

※本稿は、菅原勇一郎『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

中小企業の競争力の源泉は「人」しかない

企業は人なり。

松下幸之助さんの有名な言葉です。

いつの時代も企業にとって最大の資産は「人」です。資産が乏しい中小企業ともなれば、競争力の源泉は「人」しかない。

弁当屋「玉子屋」2代目社長の菅原雄一郎氏
弁当屋「玉子屋」2代目社長の菅原雄一郎氏(画像提供=玉子屋)

いかにスタッフを優秀な人材に育て上げていくか。いかにスタッフのやる気と能力を引き出していくか。玉子屋の成長の源泉も、突き詰めれば「人」に尽きると思います。

しかしながら、中小企業では人材確保もままならない。弁当業界も恒常的に人手不足に悩まされてきました。特にバブル期などは人ひとり雇うのも厳しかったと、菅原勇継会長(創業者で実父でもある前社長)から聞いています。

玉子屋に集まってくるのは、世間一般で言う「優秀」な人材ではありません。学校で落ちこぼれたり、夢を追いかけていたり。その夢に破れたり、どこかでつまずいたり、挫折をしてドロップアウトしたような人間が多い。元番長もいれば、元暴走族もいる。高校や大学を中退したフリーターも珍しくありません。

金を使い込まれても「悪ガキ」を採用する理由

そんな社員のことを会長は親愛の意を込めて「悪ガキ」と呼んでいました。中には集金してきた会社の金を使い込んだ者もいます。しかし会長は「悪ガキ」を積極的に採用して、玉子屋の貴重な「戦力」に育て上げてきました。

彼らの中に眠っている能力、本人が気づいていない可能性を見極め、「原石」として採用し、その能力と可能性を開花させてきたのです。

なぜ「悪ガキ」を好んで採るのか。会長は養殖の魚と天然の魚を例にこう説明してくれたことがあります。