仕出し弁当業界大手の玉子屋(東京都大田区)のメニューは日替わり弁当1種類しかない。菅原勇一郎社長は「1種類しかないからこそ、原価率50%オーバーでも儲けが出せる。野菜も肉も魚も新鮮で良質なものを使っているが、一番こだわっているのは、弁当の主役であるご飯だ」という――。

※本稿は、菅原勇一郎『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

玉子屋の弁当
画像提供=玉子屋

あえて原価率を下げない「心意気」

玉子屋の日替わり弁当は450円(※)。その原価率は2017年で53%前後。つまり、1食にかける材料費は238円50銭ほどです。これは純然たる食材費で、容器代や物流費、人件費などは含まれていません。

(※)2018年当時。2022年12月現在は500円

弁当屋の業態や弁当の種類などによって原価率は違ってきますが、良心的な弁当屋でも40~42%ぐらいが普通だと思います。

50%オーバーの原価率を維持するというのは創業者である菅原勇継会長が決めた、いわば「玉子屋の心意気」のようなものです。

お客様に満足していただける弁当をつくるために、お客様の期待を絶対に裏切らないために、可能な限り仕入れにお金をかける。「原価率を下げて利益を上げたって、半分は税金で持っていかれる。だったらお客様と社員に還元しろ」というのが会長の考え方。私も大いに賛同して、会長の考え方を引き継いでいます。

材料費以外をあの手この手で切り詰める

実際、6万食を超える大量の弁当をつくっていれば、1食の原価をもっと安くすることは可能です。しかし玉子屋では原価を下げるよりも、大量仕入れによってよりよい食材をリーズナブルな値段で調達すること、そしてご飯とおかずの質を高めることに力を入れてきました。

そんなに原価率を高くしてどうやって儲けているのか。これもよく聞かれることですが、答えは簡単明瞭です。材料費以外のコストを切り詰めることです。

たとえば玉子屋の弁当箱は使い捨ての容器ではなく、回収して繰り返し利用できるリターナブル弁当箱を使っています。

おかずを盛り付けるスピードは他社の倍以上早いのですが、それだけ製造現場の効率化が図られているということです。どこかの総研にでも調査分析を依頼すれば、最大7万食の弁当をつくるためには現状の玉子屋の3倍以上の敷地と設備と人員がないとできないという答えが返ってくると思います。