弁当の美味しさを大きく左右するのはご飯

玉子屋の弁当というと品数豊富で彩りもいいおかずに目が向きがちですが、何よりこだわりを持っているのは実はご飯です。

「何だかわからないけど、玉子屋の弁当が一番美味しい」と感じているお客様がいらっしゃれば、それは本人が気づかれていないだけで、きっとご飯が美味しいからだと思います。

どんなにおかずが美味しくても、ご飯がまずいと箸は進まない。でもご飯が美味しいとおかずがイマイチでも箸は進みます。

弁当にとってご飯が美味しいことは決定的に重要なのですが、そのことに気づいていない経営者が多いと思います。おかずは一見豪華でも、ご飯が残念な弁当がどれだけ出回っていることか。

弁当屋がご飯にこだわるには勇気と覚悟が要る。ちょっと大袈裟なようですが、間違いありません。なぜなら、ご飯は弁当に毎日入る食材だから。当然、原価に占める割合は大きく、いい米を使えば原価率は上がります。

逆に、一番コストカットしやすい部分とも言えます。玉子屋で使っている米のレベルを、「多分、お客様の7割は気づかないだろう」程度に下げただけで、年間7000万円から1億円は利益がアップする。

しかし、日本人の食の基本であり、弁当の主役であり、嘘をつかない食材だと思っているので、私は米にはこだわりたい。だから毎年、米の仕入れの時期になると慎重に慎重を期して米を選びます。前年の米に負けないレベルのものを、これ以上払ったら赤字になるというギリギリの値段で買っているのです。

安い米を使わないことで、勝率が上がる

私が玉子屋に入る前に勤めていた会社は全国の米屋のコンサルティングをしていて、私も日本全国の米を食べ歩きました。特A地区の銘柄米だけではなく、知られざる隠れたブランド米も発掘してきました。だから、米の卸し業者には私が指定した銘柄の米を入れてもらっています。

菅原勇一郎『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(扶桑社)
菅原勇一郎『東京大田区・弁当屋のすごい経営』(扶桑社)

「ご飯を比べてください」

玉子屋が営業をかけるときの強力なセールストークです。

2017年も新米の値段が10%上がって、これで3年連続の値上がりです。当然のことながら玉子屋の利益を圧迫します。でも歯を食いしばって、ほかの部分でカバーするしかない。

他社は恐らくそうはいかないから、安い米を使うはずです。ということはお客様にご飯の違いをしっかりアピールできれば、玉子屋が勝つ確率は上がる。利益率は下がっても、弁当の質は他社より上がるわけですから。

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