一度に仕入れる冷凍コロッケは30万個

たとえば定番メニューであるコロッケ。人気の高い牛肉コロッケや北海道ジャガイモコロッケ、グラタンコロッケなどは、ナショナルブランドの冷凍食品をつくっている日本の食品メーカーと共同開発した、いわば玉子屋のプライベートブランドです。

月イチでメニューにコロッケを入れるとして、玉子屋が1カ月に使うコロッケは最低でも6万個。冷凍食品は賞味期限が長いので5カ月分ぐらいを買い付けますから、一度に30万個のコロッケを仕入れることになります。

これだけの量になるとこちらの要望に添ったプライベートブランドとしてつくってもらえるし、値引き幅も大きくなる。同じようなコロッケをほかの弁当屋が1個30円で買っているとすれば、玉子屋は25円で買えます。

大手の弁当屋でも1日の食数は3000~5000食程度です。コロッケの原価が20円として10円乗せて30円で5000個売ってもメーカーの利益は5万円。玉子屋の場合は25円で1個の利益は5円しかなくても、6万個ですから30万円。5カ月分の30万個なら150万円。冷凍食品メーカーからすれば、玉子屋に25円で売ったほうが利益になるのです。

衣50%、中身50%の「限界エビフライ」

ほかの弁当屋は玉子屋より高い値段で仕入れていながら、原価率は40~42%程度。玉子屋は安く仕入れて原価率が53%ですから、原価率の差以上に実質的なクオリティには開きがあると思います。53%という玉子屋の原価率は、ほかの弁当屋なら原価率60%ぐらいに相当するのではないでしょうか。

食材のスペックをこちらで決められるのも食品メーカーとの共同開発の強みです。

たとえばエビフライ。スーパーで売っているエビフライもレストランで供されるエビフライも、大体衣が60~65%で、中身は35%ぐらいです。

それ以上衣を薄くすると揚げるときに衣が破れたり、中身が折れたりして、不良品がたくさん出てくる。つまりロスが出るわけです。

しかし、やはりエビフライの衣は薄いほうが食感がいいし、エビの存在感が際立ちます。そこで玉子屋では衣50%、中身50%という限界ギリギリのスペックでつくってもらっている。このようなお客様のためのわがままが利くのもスケールメリットと言えるでしょう。