日本の庶民の暮らしをより楽にする方法
ちなみに今の円安は主に日米の金利差によってもたらされたのであって、日本政府によるお金のバラマキによってもたらされたわけではありません。むしろ、より多くばらまいたのはアメリカであって、大規模な現金給付を3回も行っています。さらに、失業手当の拡充などでインフレ率が高まり過ぎたので、金利を引き上げることで抑制しようとしたのです。
だから、金利差を縮めて円高に誘導するには、日本もアメリカに負けじとバラマキを行い、景気を過熱させたうえで、金利を引き上げればいいのです。ただし、バラマキによって物価が上がれば長期的にはさらに円安が進む恐れがあります。
しかし極端な話、家計にお金をたくさん配ることにより物価が2倍になったとしても、対ドル円相場はおそらく2倍にはなりません。例えば、1ドル=140円から1ドル=280円になるかと言えば、一般的にはそこまでいきません。
仮に物価が2倍になり収入も2倍になって、対ドル円相場が1.5倍にしかならなければ、日本の庶民はパンとか電気、ガスなどをより楽に買えるようになります。
「ビッグマック710円」までお金をばらまくべき
要するに、家計にお金をたくさん配って物価を上げることにより、対外的な円の価値「実質実効為替レート」を上昇させることができるのです。逆に言うと、「円の実力」とも言われるこの実質実効為替レートが1995年から趨勢的に下落し続け、日本の物価が東南アジアの発展途上国並みになった主な原因は円安ではなくデフレです。
実際、2022年の日本のビッグマック指数は41位で、40位のベトナムより低い。これは、日本のビッグマックがベトナムのビッグマックよりも安いことを意味しています。日本はデフレにより「安い国」になってしまったのです。
日本のビッグマックの値段が、アメリカの値段である710円近くになるまで、お金をばらまいて物価を上昇させるべきです。デフレがなければ、日本もそのくらいの物価になっていたはずです。政府は、そうして日本を「安い国」から「高い国」にすることを、経済政策の目標として掲げるべきだと思います。
しかし、今の政府ではバラマキによるインフレ好況は期待できないでしょう。日本人は今すぐにでもアニマルスピリッツを取り戻さなければならないにもかかわらず、そういう反緊縮政策が実行に移されないことが残念でなりません。