博打を打たないと面白いものは生まれない
メタバースに関しても同じようなことが起きています。もちろんビジネス界にも行政側にも、メタバースに思い切って身を投じたほうがいいと言う人もいるのですが、ネット上の反応などを見ていると、「こんなのただのブームで終わる」「こんなブームに自分は惑わされない」といった冷笑的な人が多い印象です。
しかし「惑わされないぞ」というのは、一見自分の考えをしっかり持っているように見えて、ただデフレマインドが身についてしまっているだけではないか、とも考えられるわけです。
メタバースに関わるビジネスが当たるかどうかも博打みたいなものかもしれませんが、お金のかかる芸術やビジネスは思い切ってお金をかけてリスクをとらないと、面白いものは生まれません。
どうやって緩やかなインフレ好況を続けるか
デフレマインドを根本的に解決するには、緩やかなインフレ好況を10年ぐらい続けるしかないでしょう。今のインフレは原材料費などの上昇や円安などで発生する「コストプッシュ・インフレ」なので景気がよくなるわけでもなく最悪です。
需要が高まって景気が良くなることによって物価が上がっていく「デマンドプル・インフレ」を10年ぐらい続ければ、出口が見えてくるでしょう。30年ぐらいかけてしみついたデフレマインドは容易に消え去るものではなく、10年単位での治療が必要なものなのです。
それでは、インフレ好況を10年続けるにはどうしたら良いのでしょうか?
金融政策でインフレ率を上げるというのが主流の考えですが、すでに金利はゼロにまで至っています。だから、量的緩和政策をやってももはや銀行にお金がたまるだけで、銀行から企業、企業から家計にお金が流れていかない状況にあります。要するに、これまでの日本経済では、お金の流れが「民間銀行から企業」と「企業から家計」の二カ所で目詰まりを起こして滞っているのです。図表1の×をつけたところです。
そこで、私は政府が家計に直接給付するしかないと考えています。それはちょうど図表1の「お金(現金給付)」と書いてある矢印に相当しています。今でも日銀が上場投資信託(ETF)などを買って上場企業とその株式にお金をばらまいているので、そんなことをするくらいなら国民に平等にばらまけよという主張でもあります。