高地に住む人々は長生きし病気にもかかりにくい

では、放射能汚染されたマンションに住むことの代案は何だろうか。一つは高い山に登ることだ。標高の高い場所は大気が薄く、強い紫外線や宇宙線にさらされる。わたしはきわめて平坦な国に暮らす色白の人間なので、標高5000メートルの高所で暮らせば、日焼けの効果を証明できるだろう。

ニクラス・ブレンボー『寿命ハック』(新潮新書)
ニクラス・ブレンボー『寿命ハック』(新潮新書)

驚くほどのことではないが、高地に住む人々は放射線や苛酷な環境にもかかわらず――あるいはそれらのせいで――海抜の低い地域に住む人々より長生きし、加齢に伴う病気にもかかりにくい。これはオーストラリア、スイス、ギリシア、それにカリフォルニアでも確認されている。

高地では酸素濃度が低く、それも健康を増進するストレス要因なのかもしれない。細胞は、放射線や低い酸素濃度といったストレスにさらされると、熱ショックタンパク質を合成する。その名の通り、このタンパク質は高熱との関連で発見されたが、後に、より一般的な細胞保護機能の一部であることが判明した。これは、先に見たようにホルミシスの効果が広範に及ぶことを示している。一つのストレス要因に対する反応は往々にして、他のストレス要因に対する耐久力(レジリエンス)も向上させるのだ。

熱ショックタンパク質は他のタンパク質を助ける“スーパーヒーロー・タンパク質”と見なすことができる。細胞が何らかのストレス要因によってダメージを受けると、タンパク質の多くは形が崩れる。すると熱ショックタンパク質が登場して、細胞のゴミにならないよう形状や機能の回復を助けるのだ。

サウナと寒中水泳は理にかなっている

興味深いことに、熱ショックタンパク質の名前の由来である熱ショックを経験するのは実験動物だけではない。それはサウナという形で北欧文化に溶け込んでいる。サウナ発祥の地であるフィンランドから、サウナに関する研究が続々と届いている。

サウナで健康な男性リラックスしてウェルネスの週末を楽しむ
写真=iStock.com/nd3000
※写真はイメージです

これらの研究により、心血管疾患のリスクの低減や寿命の延伸など、サウナはさまざまな健康上の利点と相関することがわかっている。さらには血圧の低下など、他の有益な効果もある。おそらく熱ショックタンパク質はこうした恩恵の一因になっているのだろう(しかしサウナに関しては、覚えておくべき小さな「例外」がある。子どもを持ちたいと思う男性は、サウナであまり長い時間を過ごさない方がよい。長時間、高温にさらされると、精子の質が悪化するからだ。同じ理由から、熱い湯に長く浸かったり、膝にラップトップ・コンピュータを載せて座ったりすることも良い考えとは言えない)。

サウナに加えて、北欧文化のもう一つの重要な要素は、寒中水泳だ。この二つはセットになっていて、一般にサウナと寒中水泳を交互に繰り返す。

寒中水泳の効果についてのデータはサウナに関するものほどには揃っていない。しかし、長期的に健康にプラスになっていることは容易に想像がつく。一例として、寒中水泳は「褐色脂肪」を活性化する。褐色脂肪は通常の脂肪とは逆の働きをする。エネルギーを蓄えるのではなく、エネルギーを燃やして体を温めるのだ。興味深いことに、多くの長命の種では、褐色脂肪細胞が活発である。証拠になるかどうかわからないが、わたしが知っている寒中水泳のファンたちは、泳ぐようになってからエネルギッシュになり、病気にかかりにくくなり、総じて幸福な気分になった、と言う。

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