情報収集フェーズが終わったら、決定フェーズに入る前に主催者がやらなくてはならない仕事がある。今後の議論のたたき台づくりだ。引き続き、オフィス移転プロジェクトを例に説明しよう。
新オフィスのレイアウトについて各部門から要望が集まったら、それをベースにレイアウトのクライテリア(判断基準)を策定する。たとえば「外勤者の多い部門は出入り口の近く」「少人数用の会議室を複数つくる」といった具合だ。
クライテリア策定時には、制約条件も考慮する必要がある。仮にビル全体が禁煙ならば、「喫煙室はつくらない」というクライテリアが加わるかもしれない。これらをさらに具体化したものが議論のたたき台になる。
ここで注意すべき点が2つある。まず徹底したいのが、情報収集はある時点で割り切って打ち切ることだ。クライテリア策定後に新たな情報が加わると、判断基準の策定からやり直さなければならない。出席者から新たに要望が寄せられても、いまはそのフェーズにないことを認識し、切り捨てる覚悟が必要だ。
決定フェーズに入った後は、クライテリアを動かさないことも重要である。たとえばこの段階で、ある出席者から「内勤部門だが、来客が多いので出入り口付近がいい」と強く主張されたとしても、安易にその意見に傾くのはまずい。判断基準が変わると、すでに調整が完了した事項まで再考を余儀なくされる。決定フェーズの会議で話し合うべきは、「どの部門の外勤者数が多いのか」であり、「外勤者の多い部門は出入り口近く」というクライテリアの是非ではないのだ。
クライテリアは、決裁権者のお墨付きを得て確定させたい。主催者が情報を分析して導き出したクライテリアは、まだ仮説にすぎない。経営陣やプロジェクトの最高責任者など、より上位のレベルで承認を得れば、仮説が確定事項へ変わる。
もちろん、経営陣に承認を求めても、「各部門で話し合いなさい」と返ってくるケースがあるだろう。その場合はクライテリアの是非を議題にすればいい。大切なのは、どこまでなら動かせて、どこからは動かす余地がないかという線引きを明確にすることだ。
新たな情報追加も、クライテリアの途中変更も、会議を混乱に陥れる元凶だ。議論が後戻りすることがないよう、この段階でしっかりと煮詰めておきたい。